研究実績の概要 |
サルモネラは食中毒により胃腸炎や敗血症を引き起こす。このサルモネラの病原性には独立した2つのIII型分泌機構(T3SS)-1および2が重要な役割を果たす。これまでに腸炎モデルマウスを用いた感染実験から、本属細菌による遅延性炎症誘導にはT3SS-2が重要な役割を果たすこと、またT3SS-2から分泌される5つのエフェクターH, L, O, RおよびAAをコードする遺伝子の全ての欠損株(T1S5株)では、T3SS-2欠損株(T1T2株)と同様に、遅延型炎症が誘導されないことを見出した(Matsuda et al. 2019 IAI)。 本研究では、これら5つのエフェクターのうち、炎症誘導への関与が最も高いエフェクターHに注目した。エフェクターHの機能を解析するため、T1S5株のエフェクターHのプラスミド相補株を作成した。しかし、この菌株は腸炎モデルマウスに感染したのち、プラスミドの欠落が認められ、遅延性炎症を誘導しなかった。次に、エフェクターHをT1S5株の染色体上に挿入した相補株T1S5 phoN::Hを作製したが、エフェクターHが発現しなかった。 一方で、遅延性炎症誘導に関わる5つのエフェクターの欠損の組み合わせた菌株、細胞死関連遺伝子欠損マクロファージおよび各種細胞死の阻害剤を使用してマクロファージに対する細胞傷害性を調べた結果、エフェクターO、RおよびAAの3つのエフェクターの欠損株(T1S3)を細胞死関連遺伝子C欠損株に感染すると細胞傷害性が著しく低下し、T1S3株にエフェクターOの相補により細胞傷害性が回復した。このことから、細胞死関連遺伝子Cに非依存的な細胞死にエフェクターOが関与することが示唆された。
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