サルモネラの病原性発現には2つのIII型分泌機構(T3SS-1およびT3SS-2)によって分泌されるエフェクターが重要な役割を果たす。これまでにT3SS-2によるマウスマクロファージ様培養細胞に対する細胞傷害性とマウス盲腸における炎症誘導性に関連があることを見出し、これら2つの表現系に関わる5つのエフェクターを同定した。またサルモネラによるマクロファージの細胞死誘導メカニズムを解析し、T3SS-2によって非典型パイロトーシスが誘導されることを明らかとした(データ未発表)。本研究では、T3SS-2による遅延型炎症誘導において、これらエフェクターの役割を明らかにすることを目的とした。 まず、エフェクターの欠損を組み合わせた菌株を作製し、細胞傷害性を指標としてスクリーニングを行ったところ、3つのエフェクターO、RおよびAAの3重欠損(d3)株においてRAW細胞に対する細胞傷害性が著しく低下し、エフェクターOの相補によって回復した。このことから、エフェクターOが細胞傷害性に最も重要であることが示唆された。 次に、d3株またはエフェクターOの相補株をマウスに感染し、これら菌株による感染マウスの盲腸における炎症を評価した結果、どちらも野生株と同程度であった。上記5つのエフェクターの全ての欠損株では炎症が見られないことから、マウスの盲腸における炎症誘導には5つのエフェクターが必要であり、これら3つのエフェクターでは不十分であることが示唆された。一方で、感染マウスの脾臓内菌数はd3株では野生株と比較して有意に減少し、相補株では回復した。さらに、d3株をCasp11-KOマウスに感染したところ、脾臓内菌数は野生株と同程度であった。以上のことからエフェクターOによる非典型パイロトーシスの誘導はサルモネラの脾臓内菌数に影響することが明らかとなった。
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