研究課題/領域番号 |
19K07545
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
鈴木 香 順天堂大学, 医学部, 助教 (90631929)
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研究分担者 |
長岡 功 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60164399)
三田 智也 順天堂大学, 医学部, 准教授 (90532557)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 動脈硬化症 / 抗菌ペプチド / LL-37 / オートファジー / 細胞死 |
研究実績の概要 |
細菌やウイルスの持続性感染が動脈硬化症の増悪に関わるとされるが、そのメカニズムは十分に解明されていない。一方、オートファジーの機能不全は様々な疾患の基盤となる。本研究では、感染応答因子であり動脈硬化症の増悪因子としても示唆される抗菌ペプチドLL-37が、オートファジーの機能不全に陥った宿主細胞に作用して動脈硬化症の病態を増悪させるメカニズムを解明する。
LL-37を血管内皮細胞に作用させて(培養液に添加して)その影響を正常細胞とオートファジー不全細胞で比較したところ、LL-37はオートファジー機能を低下させた血管内皮細胞にのみ細胞死を誘導した。LL-37は細胞内、特に核周囲に検出され、オートファゴソームマーカーであるLC3と共局在した。正常細胞においては細胞内のLL-37は次第に分解されたが、オートファジー不全細胞ではその遅延がみられた。したがって、オートファジーの機能不全に陥った細胞においてLL-37が細胞内に蓄積して細胞死を誘導すると考えられた。
また、凝集体を認識する色素で細胞免疫染色をおこなったところ、正常細胞においてLL-37と凝集体色素は一部共局在を示した。オートファジー不全細胞では凝集体が増加し、凝集体に含まれるLL-37も増加した。したがって、LL-37は血管内皮細胞の表面に結合して細胞内に移行しオートファジーによって分解されるが、オートファジーの機能不全に陥った細胞においては核周囲に蓄積、凝集体を形成を促進することで細胞死を誘導する可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
LL-37がオートファジーの機能不全に陥った血管内皮細胞に細胞死を誘導するメカニズムはある程度明らかにできた。一方、当初計画していた動脈硬化症の病態においてLL-37の発現を誘導する要因については解明が進まなかった。
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今後の研究の推進方策 |
in vitroの解析系はおおむね確立しているため、LL-37によるオートファジー不全細胞における細胞死誘導のメカニズム解明をさらにすすめていくとともに、動脈硬化症の病態に関わる因子のうち何がLL-37の発現を誘導するのかについても検討をすすめる。さらに、モデルマウスをもちいて、LL-37の相同体であるCRAMPの動態や炎症局所への蓄積を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画の遅延により今年度予定していたマウス動脈硬化モデルの実験がおこなえなかったため、物品費予算に対して余剰が生じた。
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備考 |
Suzuki K, Nagaoka I: Effect of LL-37, a possible mediator of atherosclerosis, on senescent endothelial cells. Juntendo Medical Journal 65: 575, 2019.
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