研究課題/領域番号 |
19K07547
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研究機関 | 明治薬科大学 |
研究代表者 |
森田 雄二 明治薬科大学, 薬学部, 教授 (00454322)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 緑膿菌 / 薬剤耐性 / 多剤排出ポンプ / virulence因子 / pyoverdine / Nile red / ベルベリン / proximal binding site |
研究実績の概要 |
今年度は、コロナ禍などにより研究時間の確保や計画した実験内容をすべて実施するのが困難であり、特に超高速液体クロマトグラフ‐タンデム質量分析(UHPLC-MS/MS)やベルベリン誘導体合成はほとんど実験できなかった。多剤耐性緑膿菌のpyoverdine産生にMexXYが寄与することを見出した。pyoverdineは鉄の補足因子であるsiderophoreであり、緑膿菌のvirulence因子である。MexXY欠損によりpyoverdine産生量の増大が観察された。特に薬剤耐性緑膿菌PA7においてMexXY欠損によるpyoverdine産生量の増加比が最も大きいことが分かった。また脂質に結合することで蛍光を発する色素であるNile redで排出アッセイ系の構築を目指した。Nile redは、前年度薬剤排出アッセイに用いたベルベリンと比較して、蛍光が強く、H+ conductorであるCCCPなどの影響を受けなかった。CCCPで菌体を処理しNile redを蓄積させた後、CCCPを除去しグルコースを添加することで菌のNile red排出を測定することが出来た。蛍光が強いため、結果も安定していた。大腸菌のAcrB結晶構造を参考にMexYの分子ドッキングを行ったところ、アミカシンもベルベリン(誘導体)もMexYの推定proximal binding siteに結合し、両者が競合阻害することでMexYによるアミカシン耐性が阻害されると予想された。この結果は、構築したアミノグリコシド耐性やベルベリン(誘導体)の阻害を軽減するMexYの変異部位と矛盾しなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
以下の3つの理由から、おおむね順調に進展していると判断した。1)ベルベリン排出測定系の欠点を補うNile red排出測定系の開発が進んだ、2)分子ドッキングの結果は、変異体解析の結果を裏打ちした、3)緑膿菌の病原性におけるMexXYの役割を見出した。コロナ禍で実験時間の確保が難しかった割には、研究が進捗した。しかし、超高速液体クロマトグラフ‐タンデム質量分析(UHPLC-MS/MS)や有機合成実験はほとんど実験できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
引き続きランダムなMexXY-OprM変異体構築法を確立し、MexXY-OprM変異体を選択する。Nile redの排出測定系を完成させ、ベルベリンやアミカシンなどの薬剤と競合アッセイを行う。MexXYがpyoverdine産生を減少させるメカニズム解析も行う。有機合成実験では、ベルベリン13位への置換基に焦点を当てた構造展開研究を推進する。特に抗菌活性を持つ化合物にしばしば見出される2-アミノチアゾリル基の導入を検討したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍で研究時間の確保が難しく研究内容が制限されたため、研究費の消化が難しかった。今年度も引き続きコロナ禍で研究時間および内容が制限されるため、研究課題をより効果的に遂行するための機器を購入する。
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