昨年度は非天然型アミノ酸光クロスリンカー(pBPa)を用いてヒト脳血管内皮細胞(HBMEC)への侵入能に関与する機能未知タンパクをコードした遺 伝子NMB1345の機能解析を行い、 NMB1345 分子が線毛の主要蛋白であるPilEと相互作用することにより、髄膜炎菌の病原性に関与していることを明らかにした。 本年度においてはもう一つの機能未知タンパクである外膜タンパクTspAの宿主細胞侵襲の分子機序を解明する目的で、TspAと相互作用する髄膜炎菌因子を非天然型アミノ酸光クロスリンカーをTspAに導入することにより同定することを試みた。N末を細菌外、C末をペリプラズム側に存在するTspAのC末側には12個のリジン残基が存在する為、その全てにアンバー変異を導入したTspAアンバー変異体を作成し、髄膜炎菌内でpBPaを取り込ませ、クロスリンクしたタンパクサンプルのWesternblottingにより解析した。その結果、442番目のリジン(K442)にpBPaを取り込ませた時が最もクロスリンクするバンドが検出された。この結果を踏まえ、ヒスタグ及びTwinStrepタグを付加したtspA K442 amber変異体を構築し、大量培養後にUVクロスリンクさせ、His-sepharose及びStrepTactinレジンによる180kDaのクロスリンクバンドをCBB染色で確認できる量まで精製することが出来た。そのバンドを切り出し、MALDI-TOF MSによるPeptide Finger Printingによる同定を行なった。その結果、Responce regulator A (resA)と命名されたORF産物であることが確認された。TspAとResAの相互作用はそれぞれの抗体でクロスリンクバンドが認識されることから、髄膜炎菌内のペリプラズムにおいて相互作用していることが明らかとなった。
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