研究課題/領域番号 |
19K07553
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
山本 幸司 北海道大学, 大学病院, 特任助教 (70608322)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | H. suis感染 / 胃MALTリンパ腫 / PD-L1 / PD-1 |
研究実績の概要 |
今年度は、H. suis感染胃MALTリンパ腫発症における免疫チェックポイント関連遺伝子の詳細を明らかにするために、具体的に以下の項目について検討した。組換えIFN-γ刺激後のリンパ腫細胞上のPD-L1発現メカニズムの解析を行った。ヒトMALTリンパ腫細胞株を用いて、コントロール群、組換えIFN-γ処理群で24時間ならびに48時間で刺激実験を行い、細胞上のPD-L1遺伝子の発現を定量的PCR法ならびにフローサイトメトリーで評価した。結果、組換えIFN-γ処理群においては、ヒトMALTリンパ腫細胞株でのPD-L1の発現が時間依存的に亢進していたほか、フローサイトメトリーを用いた検討でもヒトMALTリンパ腫細胞株上のPD-L1の発現が確認された。さらなる研究で、胃MALTリンパ腫由来T細胞ではPD-1の発現が高いことが明らかとなった。 H. suis感染マウス胃粘膜に浸潤したT細胞内遺伝子の網羅的解析を行った。非感染野生型マウスならびにH. suis野生型感染マウスから胃を摘出し、T細胞特異的抗体を用いて染色後、セルソーターにてマウス胃粘膜に浸潤したT細胞を精製した。精製後、細胞からRNA抽出を行い、T細胞シグナルに関与する遺伝子について網羅的な解析を行った。結果、非感染マウス胃由来T細胞に比べてH. suis感染マウス胃由来T細胞では、T細胞の機能を破綻させるいくつかの遺伝子の発現が確認された。これらの結果、H. suis感染後の胃MALTリンパ腫形成に直接的に関与するB細胞上には、PD-L1が発現し、また、T細胞上には、PD-1が発現していると想定しており、それらの相互作用がT細胞の機能喪失を導く結果、胃MALTリンパ腫の形成・維持に関与していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通に進んでいるため。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策としては、H. suis感染胃MALTリンパ腫発症マウスモデルを用いて抗PD-L1抗体、ならびに、抗PD-1抗体を用いた胃内T細胞の機能解析とH. suis感染マウス胃MALTリンパ腫形成抑制効果の検討を行う。具体的には以下の計画を予定している。 H. suisをマウスに経口感染させ、2週間後に抗PD-L1抗体、または、抗PD-1抗体を週に3回マウスに腹腔内投与する。投与3か月、ならびに、6か月後マウス胃を回収し、コントロール群と比較して胃MALTリンパ腫抑制効果を病理学的手法で評価する。また、胃粘膜からT細胞を精製し、T細胞の機能が回復していることを遺伝子発現解析にて評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入予定であった試薬が国内在庫がなく輸入扱いとなり、今年度中の試薬の確保が出来なかったため。
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