研究課題
ヘリコバクター・シネディ(Helicobacter cinaedi)はヒトや動物の腸管・肝臓から検出される腸肝ヘリコバクター属であり、1984年に初めてヒトへの感染が確認された新興感染症菌である。近年、本菌感染症の発症例および再発例が多く報告されているが、病態発現機構や感染疫学など不明な点が多く残されている。現在までに、本菌感染症の血清診断法および遺伝子診断法を開発し、これらの方法を用いて、健常保菌者の存在および本菌感染による動脈硬化症の進展への関与を明らかにしてきた。本課題研究においては、本菌感染による病態発現機構の解明に向けた研究を展開しており、これまでに、本菌の骨髄内における潜伏感染と細胞内寄生性について解析した。その結果、本菌がマウス骨髄中において持続的に潜伏感染することが示され、加えて、本菌は感染マクロファージにおいてオートファジーによる殺菌から回避して、ミトコンドリアに集積することが示された。従って、本菌は細胞内に侵入後、オートファジーによる細胞内殺菌を回避し、ミトコンドリアのイオウ依存型のエネルギー代謝をハイジャックすることで細胞内寄生する可能性が示唆された。一方で最近、広く自然界に存在する環八イオウ(S8)が哺乳類・ヒトの生体内において、当初の想定を超える高濃度で蓄積していることが判明した。さらに、環状S8イオウがヒト細胞におけるミトコンドリアのイオウ呼吸に関与する可能性を見出した。これらのことから本菌は細胞内寄生によって血管内定着し、宿主との共生関係を構築することで動脈硬化症を含む本感染症の病態を増悪させる可能性が示唆された。本菌は日和見感染菌として考えられてきたが、このような血管内定着機構としての細胞内寄生の分子機構の解明は本菌の病原性発現と動脈硬化病因論の解明および予防・治療法開発への応用に向けて極めて重要である。
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