研究課題/領域番号 |
19K07558
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研究機関 | 福島県立医科大学 |
研究代表者 |
鈴木 倫毅 福島県立医科大学, 医学部, 助教 (80456649)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | クラミジア / 核内構造 |
研究実績の概要 |
クラミジアは偏性寄生性細菌であり、宿主細胞の様々な機能を巧妙に支配することで、細胞内への侵入および増殖を行なっている。近年、宿主細胞の様々なタンパク質を支配するメカニズムが明らかにされてきているが、核内タンパク質や宿主の遺伝子発現を制御するメカニズムは未解明である。今回の研究は、この核内制御に主眼をおいたものである。 初年度である本年度は、クラミジア感染細胞における核内構造体および核構造変化を探索した。核小体、Cajal bodyやPML nuclear bodyなどの核内構造体およびクロマチン構造の変化を観察するために、レンチウイルスベクターを用いて、N末端側にGFPタグがついた各種の構造体を形成するタンパク質を安定に発現するHeLa細胞およびA549細胞を作成した。また、核自体の構造変化を観察するために、上記同様にLaminA/CおよびLaminBの安定発現細胞株を得た。そして、得られた細胞株にC.trachomatis L2株を感染させて、感染初期、中期および後期においてこれらの構造体変化を蛍光顕微鏡下で観察した。その結果、いくつかの構造体が、感染中期以降で変化した。また、これらの変化は、免疫蛍光染色法を用いた内因性因子での観察においても確認された。 現時点において、これらの変化がクラミジア支配によるものなのか、宿主細胞の感染応答によるものなのかは不明である。今後、クラミジア感染における、これらの構造体変化の意義およびメカニズムを明らかにする必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題は、宿主細胞の核/核内構造体変化に注目し、新たなクラミジア感染メカニズムを見出すことを目的としている。本年度の研究において、クラミジア感染によりいくつかの核内構造体が変化することを見出した。現時点において、クラミジア感染において核内構造体が変化することは報告されていない。このことは、新たな感染制御メカニズムを紐解く上で最初の一歩を踏み出したと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度に確認した構造変化に対して、今後は、(1)その変化がクラミジア感染においてどのような影響を及ぼすのか、(2)どのような分子メカニズムで変化を起こすのかを明らかにしていきたい。 (1)を解明するために以下の実験を計画している。 クラミジア感染において変化のあった構造を形成する宿主細胞タンパク質をCRISPR/Cas9システムでノックアウトもしくはsiRNAでノックダウンし、クラミジア増殖への影響を検討する。また、構造を形成するタンパク質において、いくつかのスプライシングフォームが存在するものも含まれているので、ノックアウト細胞に戻すことで、スプライシングフォームについても検討する。 (2)を解明するために以下の実験を計画している。 クラミジア感染で変化を起こす構造体の形成タンパク質にBioIDをつけ、これによりその構造付近に集積するクラミジアのタンパク質を同定する。もしクラミジアのタンパク質が発見できれば、そのタンパク質をノックアウトしたクラミジア株を作成し、増殖への影響を検討する。
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