本研究は、クラミジア・トラコーマティス(以下クラミジア)感染細胞における核内構造変化からクラミジア増殖への影響を検討するものである。 そこでまず、クラミジア感染細胞における核小体、Cajal bodyやPML nuclear bodyなどの核内構造体およびクロマチン構造の変化に着目し、各々の構造体を形成するタンパク質にGFPタグをつけ、その形態変化のスクリーニングを行った。その結果、クラミジア感染で唯一変化したのは、PML nuclear bodyであった。そこで、CRISPR/Cas9システムを用いてPMLをノックアウトしたHeLa細胞を作製し、クラミジアの増殖を検討したが、大きな変化がなかった。 これらの結果を受け、最終年度は、核の構造変化に目を向けた研究を行なった。クラミジア感染時に、宿主細胞の核の形態が変化することは知られている。近年、さまざまな細胞内小器官に対してオートファジーのメカニズムを介した分解系が存在することが報告されている。また、クラミジア感染細胞において機能は不明であるが、オートファジーが誘導されることも報告されている。そこで、オートファジーによる核膜 の分解が形態変化を誘導し、クラミジア増殖に影響を与えていると仮定し、さまざまなオートファジー制御タンパク質(Atgタンパク質)をノックアウトしたHeLa細胞を用いて検討した。その結果、残念ながら核の形態変化によるクラミジア増殖への影響は認められなかったが、あるAtgタンパク質がクラミジア増殖へ影響することを見出した。今後、クラミジア感染におけるこのタンパク質の機能を検討することは、新たな制御メカニズム解明に向けての重要な研究であると考える。
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