研究課題/領域番号 |
19K07559
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研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
三宅 正紀 静岡県立大学, 薬学部, 講師 (00295560)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ヘリコバクター・シネディ / マクロファージ / 細胞内生残性 / Ⅵ型分泌装置 / ファゴソーム / エスケープ |
研究実績の概要 |
申請者らは、ヘリコバクター・シネディ (Hc) の病態形成において、マクロファージ感染が重要なステップであり、本菌はマクロファージ内において、何らかの生残機構を有している可能性を推測している。しかしながら現状では、Hcのマクロファージに対する感染性や細胞内動態、また機能する特定の菌体因子についてほとんど明らかになっていない。 本年度は、Hc株をヒト由来マクロファージ系細胞株であるU937細胞に感染させ、菌の細胞内動態を共焦点レーザー蛍光顕微鏡 (CLMS) 及び透過型電子顕微鏡 (TEM) を用いて観察した。Hc野生株をU937細胞に1~3時間感染または貪食させ、CLMSにて菌及び後期エンドソーム/リソソームマーカーLAMP2の挙動を精査した。その結果、どの感染時間帯においてもLAMP2と生菌または死菌の共局在率に殆ど差がなく高い値を示し、Hcが感染初期のファゴソームにおいてリソソームの融合による殺菌作用を受ける可能性が示された。 また、感染3時間後における細胞内の野生株の挙動をTEMにて観察したところ、ファゴソーム内に取り込まれている菌体を確認する一方、細胞質に局在する菌体の存在が明らかとなった。また、ファゴソーム内に取り込まれた菌体がファゴソーム膜へ接着している所見、さらに細胞質側へ菌体が大きく陥入する所見を得た。これらより、マクロファージ内へ感染したHcは、多くがファゴソーム内に取り込まれるが、一部の菌体は、その後細胞質にエスケープする可能性が示唆された。また、これらと同様の所見がHcp変異株、DotU変異株の感染時においても観察されたことから、HcのⅥ型分泌装置はこの特異的感染現象に関与しないことが推測された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Hcがマクロファージ内で残存することを可能にすると推測される特異的な感染現象を見出すことが出来た。 また、Hcのマクロファージ感染において機能する菌体因子候補として、動脈硬化症の原因となるマウロファージの泡沫化を誘導する活性を保有するCAIP (Cinaedi Atheroscleorosis Inflammatory Protein) について、その変異株の作製に成功した。したがって、本研究課題はおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
Hc感染により促進される病態の一つであるアテローム性動脈硬化症の原因となるマクロファージの泡沫化について、その誘導活性をもつCAIPの変異株作製に成功したことから、今年度は本病態形成の分子機構の解析に集中する。 Hc野生株及び作製した本変異株を利用し、マウス感染における動脈硬化進展の比較解析、マクロファージ感染における泡沫化誘導の比較解析及び菌・マクロファージにおける発現変動遺伝子の網羅的解析等により、Hcの感染・病態形成におけるCAIPの機能、及びHc感染による動脈硬化促進の分子機構の解明を目指す。
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