申請者は嫌気性菌のO2感受性機構の解明を目的として、絶対嫌気性菌のクロストリジウム菌や嫌気性菌のビフィズス菌、酸素感受性の乳酸菌を用いて研究を行っている。ビフィズス菌は乳児腸内菌叢の優占種であり、高いプロバイオティクス効果を持つ。健康や医療分野での利用が期待されるが、高いO2感受性をもつが故に産業利用が困難である。申請者らはこれまでに高いプロバイオティクス活性を持つ乳児由来のビフィズス菌:Bifidobacterium infantisが低濃度のO2下で生育が著しく阻害されることを見いだし、本菌株からO2感受性の原因となる活性酸素H2O2を生成する酵素を同定した。また本酵素をコードする遺伝子をO2耐性株のB. minimumに 導入したところ、B. minimumがO2感受性に変化した。本結果より、1つの原因酵素がビフィズス菌のO2感受性を左右する可能性を推定し、研究を進めている。同定したO2感受性に関与する原因酵素の分布調査を行った結果、O2高感受性株:B. infantisに加え、主に成人腸内に生息するB. adolescentisも本酵素を保持し、かつ高いO2感受性を示すことを見いだした。そこでB. adolescentisのH2O2生成酵素の酵素化学的な諸性質の解析を行った。その結果、本酵素がO2に対して高い親和性を持つことを検出し、さらにB. infantisと同様の機構にてH2O2生産に関与する原因酵素として機能しうることが強く示唆された。一方申請者らは、訪花昆虫から単離した20%O2存在下で生育可能なビフィズス菌の単離に成功し、O2高感受性で検出された原因酵素との比較解析を行う研究基盤を得た。単離した菌株は、新種のビフィズス菌であることが判明し、新種提唱を行った。 最終年度は、これまでに得られたO2感受性メカニズムの分子機構に関する結果を総括し、その一部は国際誌への執筆と国内外での学会発表を行い、研究成果を公表するに至った。
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