研究課題/領域番号 |
19K07566
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研究機関 | 新潟薬科大学 |
研究代表者 |
井深 章子 新潟薬科大学, 応用生命科学部, 教授 (60301420)
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研究分担者 |
梨本 正之 新潟薬科大学, 健康・自立総合研究機構, 教授 (30228069)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | MBLスーパーファミリー / β-ラクタマーゼ / tRNase Z |
研究実績の概要 |
医療現場で単離されるβ-ラクタム系薬耐性菌の多くは、酵素β-ラクタマーゼを生産し、薬剤を分解することで耐性を獲得している。メタロ-β-ラクタマーゼ(MBL)は他のβ-ラクタマーゼに分解されにくいカルバペネム系薬に対する分解活性が高く、MBL生産菌は院内感染における脅威の1つである。本研究ではメタロ-β-ラクタマーゼ(MBL)の新規阻害剤の探索を見据え、MBLの新規酵素機能の解析を行っている。初年度は、MBLの1つであるIMP-1がMBL類似酵素の活性を有するかどうかを活性測定によって検証した。 核酸を基質とした場合、IMP-1はunstructured DNAに対するDNase活性は示さなかったが、複数のRNA基質(total cellular RNA, unstructured RNA, pre-tRNA)に対してRNase活性を示すことが明らかになった。unstructured RNAおよびpre-tRNAの分解位置や、金属(MnおよびMgイオン)存在下での活性は、tRNaseZとは異なっていた。 IMP-1においてRNaseとβ-ラクタマーゼの機能が同じ活性部位によるものであれば、核酸によってβ-ラクタマーゼ活性が阻害されると想定し、核酸存在下でIMP-1のβ-ラクタマーゼ活性を測定した。その結果、予想に反してβ-ラクタマーゼ活性の上昇が確認された。このことから、核酸が阻害剤ではなく活性化剤となる可能性とともに、IMP-1のRNase活性とβ-ラクタマーゼ活性が、同じ触媒部位によるものではない可能性が示唆される結果となった。これは、構造の類似性からは想定されなかった結果であり、現在、核酸の種類や条件を変更しながら、詳細な解析を続けている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
MBLにおけるMBL類似酵素の活性として、DNase/RNase活性、グリオキサラーゼ活性、アリルスルファターゼ活性、クラスII 3',5'-サイクリックヌクレオチドホスホジエステラーゼ活性を測定する予定であった。IMP-1のDNase/RNase活性、グリオキサラーゼ活性は測定でき、特にRNase活性については共同研究者と協議の上、様々な条件において詳細な解析を行った。その一環として、2年目に実施を予定していた解析(β-ラクタム剤によるtRNase Z活性阻害作用、核酸によるIMP-1のβ-ラクタマーゼ活性阻害作用の解析)の一部を実施した。一方、RNase活性測定で想定していなかった実験が必要となったため、1年目に予定した全ての活性測定の実施には至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、MBLとMBL類似酵素の一次配列の徹底的な比較を行いつつ、MBLにおけるMBL類似酵素の活性測定を早急に全て実施する。また、当初は想定していなかった現象(RNA存在下におけるβ-ラクタマーゼの活性化)が見られているため、MBLの活性部位以外にMBL類似酵素基質の結合部位が存在する可能性を踏まえ、引き続きMBL類似酵素の基質/基質類似体のMBLへの結合状態の解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初導入を計画していた設備備品が予算上購入困難となったため、異なるメーカー・仕様の機器を購入することとなり、差額が生じた。本年度購入しなかった試薬・消耗品を、翌年度予算と合わせて購入することを計画している。
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