研究課題/領域番号 |
19K07568
|
研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
小川 道永 国立感染症研究所, 細菌第一部, 室長 (80361624)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 肺炎球菌 / オートファジー / 病原因子 / コリン結合性タンパク質 |
研究実績の概要 |
肺炎球菌 は鼻咽頭に常在す る日和見細菌だが、小児や高齢者では菌血症・髄膜炎といった致死性の 高い侵襲性肺炎球菌感染症(IPD)を引き起こす。IPD発症時には、肺炎球菌は鼻咽頭上皮層に侵入し、細胞内を通り抜けて深部組織、最終的には血管内へと到達することが知られている。しかし、宿主細胞内でのにおける肺炎球菌と宿主細胞との相互作用、特に肺炎球菌の細胞内生き残り戦略については不明な点が多く残されている。 現在までに我々は、細胞内に侵入した肺炎球菌に対してカノニカル、ノンカノニカルなオートファジーが連続的に誘導され、そこで、本研究では肺炎球菌が菌体表層に保有する一連の病原因子Cbp(Choline binding protein)ファミリーに着目し、肺炎球菌感染時に感染細胞のオートファジーを調節する可能性について検討した。その結果、病原因子CbpCはAtg14およびp62と結合し、Atg14-CbpC-p62複合体を形成し、オートファジーを誘導することを見出した。さらに、CbpCを一過性に細胞に発現させたところ、CbpCのAtg14結合性依存的に細胞内のAtg14が分解されため、CbpC欠失肺炎球菌変異株を細胞に感染させた結果、CbpC依存的にAtg14が分解され、その分解が選択的オートファジー活性を低下させ肺炎球菌の細胞内生存を増強させることを見出した。さらにAtg14の顕著な分解は、CbpCとp62との結合依存的であったことから、肺炎球菌感染細胞でのAtg14消失がAtg14-CbpC-p62複合体形成によることが強く示唆された。 以上の結果より、細胞内に侵入した肺炎球菌が宿主のオートファジー機構の一部をハイジャックしてAtg14を分解することで、自らに殺菌的に働く選択的オートファジーを抑制するという、細菌の巧妙な生存戦略の一端が明らかになった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
予想以上に研究が進み欧文誌に報告することが出来、さらに次に繋がる成果も予想以上に得られているため。
|
今後の研究の推進方策 |
現在までに我々は、細胞内に侵入した肺炎球菌に対してカノニカル、ノンカノニカルなオートファジーが連続的に誘導され、最終的に菌は選択的オートファジーにより捕捉され殺菌されることを報告している。そこで、これらの2つのオートファジーの誘導に関与する宿主因子と病原因子の探索と機能解析を行い、治療薬開発の基盤となる宿主細胞と肺炎球菌の相互作用の解明を目指す。
|
次年度使用額が生じた理由 |
年度末納品等にかかる支払いが、令和3年4月1日以降となったため。 当該支出分については次年度の実支出額に計上予定であるが、令和2年度分についてはほぼ使用済みである。
|