研究課題
肺炎球菌は鼻咽頭に常在する日和見細菌だが、小児や高齢者では菌血症・髄膜炎といった致死性の高い侵襲性肺炎球菌感染症(IPD)を引き起こす。IPD発症時には、肺炎球菌は鼻咽頭上皮層に侵入し、細胞内を通り抜けて深部組織を経て、最終的には血管内へと到達することが知られている。しかし、宿主細胞内における肺炎球菌と宿主細胞との相互作用、特に細胞内生き残り戦略については不明な点が多く残されている。昨年までの成果から、細胞内に侵入した肺炎球菌に対してカノニカル、ノンカノニカルなオートファジーが連続的に誘導されること、肺炎球菌が菌体表層に保有する病原因子Cbp(Choline binding protein)ファミリーに属するCbpCがAtg14およびp62と結合することで細胞内のAtg14が分解され、その分解が選択的オートファジー活性を低下させ肺炎球菌の細胞内生存を増強させることを見出し、論文として報告した。そこで本年度は、オートファジーの上流に位置する、感染の初期段階の重要なイベントである肺炎球菌の細胞付着、侵入、エンドソーム破壊に着目し、これらの感染イベントに関与する宿主因子、病原因子の探索とその分子メカニズムの解明を行った。そして、まずそのスクリーニングに必要なアッセイ系の構築をNanoLucおよびNanoBiTを用いて行った。その結果、従来の方法では2日から3日かかっていた肺炎球菌の細胞付着、侵入、エンドソーム破壊のアッセイを実験当日に簡便にアッセイできる方法の開発に成功した。そして、そのアッセイ系を用いて肺炎球菌の病原因子欠失変異株を用いたスクリーニングをおこなった結果、大変興味深い結果が得られた。
2: おおむね順調に進展している
アッセイ系の構築、バリデーションから、スクリーニング系の立ち上げ、病原因子の同定にまで到達することができたため。
上述のアッセイ系を使って更なる病原因子のスクリーニングをおこない、そこから得られた知見をさらに発展させ、その分子メカニズムを解明し、早い時期に論文投稿を目指す。
予想以上に研究が進み論文の英文校正費用が必要となったが、論文の最終稿に必要なデータ取りにはやむなく年度を超えることが必要となったため。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 オープンアクセス 2件、 査読あり 1件) 学会発表 (12件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
Nature Communications
巻: 13
10.1038/s41467-022-28171-5
Autophagy
巻: 17 ページ: 1~382
10.1080/15548627.2020.1797280