人獣共通感染症であるレプトスピラ症の病原体レプトスピラは,ラットなどの宿主動物の腎臓に持続感染することができるが,持続感染に必須のレプトスピラ遺伝子はほとんど明らかになっていない.本研究では,レプトスピラのトランスポゾン挿入変異体ライブラリーの感染実験を行い,腎臓に定着できない変異体を網羅的に取得することにより,レプトスピラの宿主持続感染機構を総合的に解明することを目的とする. レプトスピラ血清型Manilaeのトランスポゾン挿入株ライブラリーのラットへの感染実験によって得られた,腎臓への定着が著しく低下したRS00325株およびRS01180株,また腎臓への定着能が変わらないトランスポゾン挿入株10-5-7(コントロール株)のラット体内での挙動を調査した.in vitroでの増殖速度を調査した結果,RS00325株,RS01180株および10-5-7株の増殖速度は野生株と変わらないことが明らかとなった.ラットでのトランスポゾン挿入株の挙動を調査するため, 10-5-7株と野生株をそれぞれ5×10^7細胞同時にラットに感染させた場合,感染3日目に血中の菌数は最大となり,その時の10-5-7株と野生株の菌数は大きく異なることはなかった.また感染3週間後の腎臓に定着していた10-5-7株と野生株の割合も同じであった.一方腎臓への定着が著しく低下したRS00325株あるいはRS01180株を野生株と同時に接種した場合は,感染3日目の血中のRS00325株は野生株の約1/1000,RS01180株は約1/60に低下していることが明らかとなった.
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