研究課題/領域番号 |
19K07572
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研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
大塚 菜緒 国立感染症研究所, 細菌第二部, 主任研究官 (90596610)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | Bordetella pertussis / fimbriae / gene expression / RisA |
研究実績の概要 |
百日咳菌の線毛遺伝子fim3は複雑な発現制御機構下に置かれており、Pfim3 poly(C) ≧14Cの場合には vag(virulence-assiciated gene)として、≦13Cの場合にはvrg (virulence-repressed gene)として機能することが判明した。そこで、fim3がvrgとして機能するにはリプレッサーBvgR, アクチベーターRisAの制御を受けることが示唆された。 R1年度は百日咳菌RisAのPfim3への結合解析を中心に行った。his-tagged proteinとして大腸菌で産生させた6His-RisAをNi-NTAカラムで精製し、尿素による可溶化ののち透析・濃縮を行なった。まずゲルシフトアッセイによりRisAとPfim3の結合特異性を調べた。ラベル標識オリゴの100倍量の非標識ターゲットDNAを競合させるとRisAとPfim3の結合が完全に阻害されたのに対し、400倍量の非標的非ターゲットDNAを競合させても結合阻害が認められなかった。また、抗RisA抗体存在下ではRisA-DNA-抗体複合体形成によるスーパーシフトが確認された。これらのことより、RisAはPfim3に特異的に結合することが示された。次に、Bvg-環境下で発現型となるPfim3-13Cと非発現型Pfim3-14Cを標的オリゴとして、RisAの結合親和性を調べた。ところが、結合親和性:Kd値は両者で大きな違いがなく、また標的オリゴ中に複数のRisA結合領域が存在することが示唆された。これには実際に複数の結合領域が存在する可能性と、可溶化剤を用いて精製したRisAの構造的影響による不特異結合の可能性が考えられた。また、RisA構造の問題はなくても、Pfim3へのRisAの結合に他の因子の関与が必要となっている可能性も考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請書の計画通り研究を進めており、研究の進展は順調と考える。現在までにRisAのPfim3配列への結合特異性を明らかにすることができた。しかし、R1年度の研究結果から、新たに百日咳菌fim3の遺伝子発現調節にアクチベーターRisA以外の因子(c-di-GMP, RisAリン酸化)の関与を検討する必要が生じたため、R2年度はこれを考慮して研究を推進する。
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今後の研究の推進方策 |
R2年度はまずR1年度に見出された課題を考慮して、RisAのPfim3への結合を測定する。RisAを可溶化剤のない状態で精製したものを用い、結合アッセイの際にはc-di-GMPおよびRisAリン酸化がRisA-Pfim3結合へ及ぼす影響を検討する。RisAのリン酸化はリン酸基供与体であるアセチルリン酸リチウムカリウムにより直接行うか、RisA kinaseとして推定されているRisKを介してATPから供与するかして行う。また、Pfim3プロモーター活性測定の準備として百日咳菌risA欠損株およびアッセイベクターの作製を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度をまたぐ研究遂行のため必要な試薬・物品がR1年度の残額より高額であったため、繰り越してR2年度交付金と合わせて支払う予定としている。
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