研究実績の概要 |
インフルエンザの病態を理解するためには、インフルエンザウイルスの増殖機構や宿主細胞との相互作用を解明することが重要である。そのためには、ウイルスゲノム上にコードされるタンパク質だけではなくゲノム上の塩基配列に由来する機能性RNAの理解が必須である。これまでにわれわれは、インフルエンザウイルスがsmall RNAを産生することや、それがウイルスの生活環に影響を与えていることなどを示してきた。 令和2年度の実績として、ウイルスに由来するRNAが化学的な修飾を受けることで機能が変化する可能性を検討した。培養細胞にインフルエンザウイルス株を感染させた後にRNAを抽出し、化学修飾を受けたRNAを検出する抗体を用いてRNA免疫沈降実験を行った。検討したRNA修飾は、Inosine, 5-methylcytosine, N6-methyladenosine, N1-methyladenosine, Pseudouridine, N4-acetylcytidine, 7-methylguanosineの7種類である。いずれのRNA免疫沈降実験においても、次世代シーケンサー解析を行うために十分な量のRNAを回収することができた。得られたRNA試料をもとにランダムプライマーによる逆転写反応を行い、その後に両末端へのアダプター配列付加とPCRによる増幅反応を行った。調整されたサンプルを次世代シーケンサー解析に供し、各サンプル当たり約6億リードの塩基配列が取得された。
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