研究実績の概要 |
インフルエンザの病態を理解するためには、インフルエンザウイルスの増殖機構や宿主細胞との相互作用を解明することが重要である。そのためには、ウイルスゲノム上にコードされるタンパク質だけではなくゲノム上の塩基配列に由来する機能性RNAの理解が必須である。インフルエンザウイルスのゲノムから新規のsmall RNAが産生されることが近年になって明らかになり、本研究課題においてそれが産生されるメカニズムやウイルスの生活環に与える影響などを解析している。 令和3年度は、前年度までに得られた実験データをもとに、Inosine, 5-methylcytosine, N6-methyladenosine, N1-methyladenosine, Pseudouridine, N4-acetylcytidine, 7-methylguanosineといったRNA化学修飾がsmall RNAに関わるウイルスゲノム領域に存在するかの探索を行った。ウイルス感染細胞から抽出したウイルスゲノムを断片化し、RNA修飾に特異的な抗体を用いて免疫沈降に供したのちに次世代シーケンス解析を行い、沈降実験によって濃縮されたRNA領域を同定した。結果として、Inosine、Pseudouridine、N1-methyladenosine、N4-acetylcytidineがネガティブセンスであるインフルエンザウイルスのRNAゲノムに存在していることを発見した。さらにこれらのRNA修飾に関わる宿主因子はウイルス感染によって発現量が変化しており、逆にこれらの宿主因子を欠損させるとウイルス増殖が負に制御されることから、RNA修飾がウイルスの生活環に深く関わっていることが明らかとなった。
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