研究実績の概要 |
我々はヒトがEpstein-Barr Virus (EBV)に初感染した際に生じる肝炎の発症機序を解明するために、EBVと同じγヘルペスウイルス亜科に属するMurine herpesvirus 68 (MHV68)に初感染したマウスに生じる肝炎を動物実験モデル系として用いて解析してきた。これまでに我々はMHV68感染マウスに肝炎が生じること、肝炎が腸内細菌の働きにより生じている可能性を示してきた。 本年度我々は、腸内細菌産物であるLipopolysaccharide (LPS) やPeptidoglycan (PGN) は腸管から門脈を介し肝臓へ送られる (Porter, Physiol Behav. 1998) こと、これら産物を認識するToll-like Receptor (TLR) からのシグナルとIFNγとの共刺激でCXCR3リガンドケモカイン産生が亢進する (Proost, J Leukoc Biol. 2004) ことが示されていることから、LPS・PGNを有力候補とした解析を行った。LPS受容体であるTLR4の阻害剤であるC34や,PGNの受容体であるTLR2の中和抗体を投与して解析した結果、C34腹腔内投与マウスでは体重減少の抑制、肝組織へ浸潤CD8陽性T細胞数の減少、CXCR3リガンドケモカイン産生の減少といったデータが得られた。一方でTLR2の中和抗体を投与したマウスでは未投与マウスとの相違は見られなかった。これらの結果からMHV68肝炎はPDGではなくLPSによって引き起こされている可能性が示された。 本研究の核心的な問いは「どの腸内細菌がどのようにMHV68を引き起こすのか」というものであり、本年度における解析の結果「グラム陰性菌がTLR4の経路を介して肝炎を生じさせている」可能性を示すことができたことからおおむね順調に進捗していると考えられる。
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