研究実績の概要 |
EBウイルス(Epstein-Barr Virus, EBV)に初感染した成人に発症するInfectious Mononucleosis (IM) は稀に重篤な肝炎を起こす。慢性活動性EBV感染症 (CAEBV)では症例の47%に肝炎が見られる。これらEBV肝炎はCD8陽性T細胞集積を特徴とするがEBVは肝細胞に感染しないことからその発症機構はよく分かっていない。我々はEBV肝炎の発症に腸内細菌が関わっているという仮説を立てた。IMのモデルとして用いられるMHV68感染マウスの飲水中にNeomycinを加え腸内細菌を除く実験を行った結果、Neomycin投与MHV68感染マウスでは体重減少の抑制、肝逸脱酵素量減少、浸潤CD8陽性T細胞数の減少、CXCR3リガンドケモカイン産生の減少が見られた。これらの結果から、門脈を介して肝臓に運ばれる腸内細菌産物がCXCR3リガンドケモカインの産生亢進に寄与し、結果としてCD8陽性T細胞の肝臓への浸潤を促進することで肝炎が生じている可能性をこれまでに示した。 本研究において、MHV68肝炎を引き起こす腸内細菌産物を明らかにするための解析を行った。腸内細菌産物の一つであるLPSは血管内皮細胞または線維芽細胞に発現しているToll-like receptor (TLR) -4がレセプターとなる。MHV68初感染マウスにTLR4の中和抗体を腹腔内に投与したところ、体重減少の抑制、末梢血中のAST、ALT量の減少、IFNγ陽性CD8陽性T細胞の浸潤の抑制、CXCR3リガンドケモカイン産生の抑制がみられた。一方でPDGの受容体であるTLR2を中和抗体では肝炎が抑制されなかった。さらに、TLR4の阻害剤であるC34を用いた結果C34投与によって肝炎の症状が抑制されることが示された.この結果はIM時に生じる肝炎がTLR4阻害剤による治療可能性が示された。
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