研究課題/領域番号 |
19K07578
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研究機関 | 岐阜薬科大学 |
研究代表者 |
井上 直樹 岐阜薬科大学, 薬学部, 教授 (90183186)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | サイトメガロウイルス / モルモット / 先天性感染 / 感染防御 / 免疫回避 / 細胞死 / Fcγ受容体 |
研究実績の概要 |
先天性サイトメガロウイルス(CMV)感染は新生児300人に1人に起り、その1/3に神経学的障害をもたらすため、ワクチン開発が求められている。本研究の目的は、先天性CMV感染を小動物で唯一起すモルモットCMV(GPCMV)モデルにおける、1)感染防御に関わる免疫指標測定系の確立、2)CMVがコードする免疫回避関連遺伝子の機能解析、3)感染に伴う胎盤での遺伝子発現変化やNK細胞の活性化機序の解析などにより、CMVに対する宿主免疫とウイルスの免疫回避機構を明らかにすることである。 今年度の進捗は以下の通り。a)抗体依存性の細胞傷害(ADCC)や貪食(ADCP)に関わるモルモットのFcγ3A受容体ホモログのモルモットIgGとの結合に関与するアミノ酸残基や糖鎖修飾部位を明らかにした。モルモットとヒトの受容体は多くの類似性を示す一方で、ヒト受容体がヒトとモルモット両者のIgGと結合するのに対し、モルモット受容体はモルモットIgGに特異的に結合する特徴を示した。b)CMV粒子を結合させた蛍光ミクロスフェアや蛍光色素標識したCMV感染細胞を標的としたADCPをフローサイトメーターで解析できる系を確立した。c)昨年度同定した免疫回避関連遺伝子の解析を進めた。gp38.1がBAXとの結合を介して細胞死を阻害すること、gp38.1欠損ウイルスが少なくとも脾臓でウイルス量が減少することを示したが、BAKを介した細胞死を阻害できていないためにin vitro/in vivoともにgp38.1の効果が限定的であるという仮説をもとに検討を進め、細胞死阻害に関わる第2の遺伝子を同定した。また、GP119.1遺伝子産物は、糖鎖修飾を受け、IgGのFcとの結合能があり、粒子に取り込まれることを示した。d)樹立したモルモット胎盤由来不死化細胞株を用いてGPCMV感染に伴う遺伝子発現の変化を解析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
NK細胞の解析は難航しているが、その他の内容は予定した計画に沿って、順調に進んでいる。特に、宿主の感染防御機能を阻害するgp38.1およびGP119.1それぞれについて、論文を発表できた。
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今後の研究の推進方策 |
令和元年および2年度の継続を含め、当初の計画通り研究を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染症に伴う発表予定だった国際・国内学会のキャンセル。感染症に関わるプラスチック製品の欠品などに伴う納入遅延。現在、必要な製品の納入はされ、予定通り実験を進めている。
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