研究課題/領域番号 |
19K07583
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研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
村松 正道 国立感染症研究所, ウイルス第二部, 部長 (20359813)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | B型肝炎ウイルス / ゲノム挿入 / ウイルスDNA / ウイルス発がん / p53 |
研究実績の概要 |
B型肝炎ウイルス (HBV) の発がん過程では、ウイルスDNAが宿主のゲノムに挿入され、がん化が進む。ゲノム挿入は、ウイルス側と宿主側のDNA断端形成、断端修復反応に伴うウイルスDNAの宿主ゲノムへの挿入、挿入DNAの安定化とウイルス遺伝子産物の恒常的発現、という過程を踏むと想定される。 そこで本研究では、培養細胞株モデルを使い各過程に関わる因子を分子生物学的アプローチで捉えることにより、HBV発がん機構の解明を目指す。 本年度は、ゲノム挿入効率を左右する因子を同定するにあたり、2つの目標をあげた。まずはゲノム挿入効率の簡便な評価方法の樹立である。PCRを基盤とした方法論は既に論文発表されている方法を試し機能すること分かったが、定量的評価には向かないことが分かった。そこで定量性を持ちつつ簡便にゲノム挿入を評価できる系の開発に着手し現在も遂行中である。 次の目標は、ゲノム挿入効率を左右する因子の同定であるが、最も重要な候補としてp53に着目している。一般にp53活性がなくなるとゲノム変異率が上がり、また肝細胞癌でもp53遺伝子の変異のためその機能が喪失していることが報告されている。そこで p53活性のない肝細胞株を樹立することで、ゲノム挿入効率が上昇するか検討する。HBV感染を受容するヒト肝細胞株において分子生物学的にp53遺伝子座を破壊したp53KO細胞株を樹立した。またこの細胞がHBV感染を受容する能力を保持していることを確認した。この細胞株を用いてゲノム挿入率を検討することによりp53の寄与およびより効率のいい評価系に繋がる可能性が期待された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究プロジェクト提案は、ウイルスDNAの宿主ゲノムへの挿入を評価することが最も重要な評価系である。計画当初はinverse PCR法という特殊なPCR法を評価方法として想定したが、この方法は定量性が乏しく擬陰性や擬陽性が多いことが判明した。そこで本研究提案の目標を到達するためには、より効率的でかつ定量性のあるゲノム挿入評価法の樹立が必要であることが明らかとなった。評価方法の開発を先に注力することとなった。
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今後の研究の推進方策 |
より効率的でかつ定量性のあるゲノム挿入評価法の樹立を最重要課題としてあげ、以下のトライアルを新たに加える。 ゲノム挿入を抑制する宿主因子の欠損株を作成する。 大量に細胞中に存在する非挿入ウイルスDNAを除去するステップを評価方法に取り入れる工夫もおこなす。 次世代シークエンスを組み込んだ評価方法も検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定通り使用予定だったが、年度末に出張予定となっていた新型コロナアウトブレークで出張中止になったから。
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