本課題ではエボラウイルスの主要標的細胞とされているマクロファージや肝細胞でのウイルス増殖がエボラウイルス感染症で観察される病態にどのように関与しているのか、ウイルスの組織指向性や主要標的細胞での増殖能力と致死的病態の関連性を明らかにすることを目的とした。これまでの解析によりマクロファージや樹状細胞でのウイルス増殖を抑制した組換えエボラウイルスは、マウスモデルにおいて病原性が減弱することを確認するなど、感染初期におけるマクロファージでのウイルス増殖の重要性を示した。本課題では、まず肝臓で発現することが報告されているmicroRNA122を、肝細胞でのウイルス増殖抑制のターゲット候補とし、microRNA122に対応する遺伝子配列を組み込んだ組換えエボラウイルスを作出した。本年度は、microRNA122に対応する遺伝子配列を組み込んだウイルスが、実際に増殖抑制されているか培養細胞を用いて検証した。Vero細胞とVero細胞にmicroRNA122のmimicRNAを発現させた細胞に、エボラウイルス、microRNA122に対応する遺伝子配列を組み込んだエボラウイルス及びコントロール配列としてmicroRNA143に対応する遺伝子配列を組み込んだウイルスをそれぞれ接種し、経時的にウイルス増殖を解析した。その結果、microRNA122に対応する遺伝子配列を組み込んだエボラウイルスは、microRNA122のmimicRNAを発現したVero細胞で増殖が抑制される傾向にあることが確認された。今後はこの組換えウイルスを用いて実験動物での病原性について解析していく予定である。
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