研究課題/領域番号 |
19K07588
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
松下 隆彦 埼玉大学, 理工学研究科, 助教 (10435745)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | インフルエンザウイルス / プロドラッグ / パンデミック / シアル酸 / ノイラミニダーゼ / ファビピラビル / アビガン |
研究実績の概要 |
抗インフルエンザ薬ファビピラビル(アビガン錠)は、感染細胞で起こるウイルス遺伝子の複製を阻害することでウイルス増殖を抑制する。既存の抗インフルエンザ薬とは作用機序が異なり、発症後48 時間経過した感染者や薬剤耐性ウイルスにも効果があるとされる。しかし、必要量がオセルタミビルよりも約70 倍多く、胎児の催奇形性が懸念されるなど問題があった。ウイルスに感染していない細胞にまで薬の作用が及ぶことが原因と考え、本研究ではインフルエンザウイルスが持つシアル酸分解酵素ノイラミニダーゼのはたらきをきっかけに、薬剤が遊離される仕組みをもつプロドラッグの試作に取り組む。本プロドラッグ化戦略は、他の抗インフルエンザ薬への展開や、ノイラミニダーゼ活性をもつ他の病原微生物の治療にも役立つと考えられることから、新薬開発の道筋を大きく広げる可能性がある。昨年度は、安価で入手の容易なファビピラビルの類縁化合物を薬剤モデルに用いて、プロドラッグ合成の鍵となる保護・脱保護条件を見出した。今年度はこれらの合成条件に基づいてプロドラッグの試作を行い、ノイラミニダーゼを用いた薬剤遊離試験に供した。プロドラッグのシアル酸部位はノイラミニダーゼによって速やかに切断された。この反応を起点にリンカー部位が崩壊し、最終的に薬剤モデルが遊離することを確認した。このことから、ノイラミニダーゼのはたらきをきっかけとした薬剤遊離機構の実現可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
薬剤モデルを使ったプロドラッグの試作と薬剤遊離試験による機能評価を達成したことから、概ね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度実施した薬剤遊離試験により、最終的な薬剤モデルの遊離速度が遅いことが明らかになった。解決に向けた鍵はシアル酸と薬剤モデルをつなぐ自己崩壊性リンカーの構造にあると考える。今後はリンカー部位の改良による薬剤遊離速度の向上とともに、ファビピラビルを用いたプロドラッグの構築に取り組む。
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次年度使用額が生じた理由 |
プロドラッグのリンカー部位を改良することによる薬剤遊離の迅速化、および実際の薬剤を用いたプロドラッグの構築を翌年度に実施することとしたために次年度使用額が生じた。これらの研究遂行にかかる経費に充てる。
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