研究実績の概要 |
HIVGKOを感染させたJurkatT細胞モデルを用いて潜伏感染細胞の遺伝子発現プロファイルをCAGE法により解析した。非感染細胞に比較して潜伏感染細胞で31種の遺伝子発現の低下を同定したが、遺伝子発現が増加した遺伝子は認めなかった。これらの遺伝子のうち非感染細胞でSPP1とAPOEが増加していたことは、そのノックダウンにより感染細胞が低下することから、これらの遺伝子発現がHIV-1感染に抑制性に機能していることを示唆している。さらに潜伏感染細胞とウイルス産生性感染細胞でmTOR経路の遺伝子群の発現に差があることに注目し、mTOR経路の発現が低い細胞で潜伏感染が多いことを発見し報告した(Matsui et al., Journal of Virology, 2021)。以上の知見から、感染する細胞の遺伝子発現の状態が、ウイルス感染が起こるかどうか、さらにウイルスのインテグレーション後にウイルス産生につながるか、転写が停止し潜伏感染の状態に陥るかに影響していると考えられた。 またこの潜伏感染細胞モデルを用いてCRISPRスクリーニングを行い、潜伏感染の再活性化に関わる遺伝子群を同定した。これらの遺伝子をCRISPRでノックアウトすることによりウイルス再活性化が起こることを発見し研究を継続している。
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