研究課題/領域番号 |
19K07593
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
久保 嘉直 長崎大学, 熱帯医学研究所, 准教授 (30273527)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 節足動物 / GILT / mTOR |
研究実績の概要 |
gamma-interferon-inducible lysosomal thiol reductase (GILT)は抗原蛋白質のS-S結合を切断し、プロテアーゼ分解を受けやすくすることにより、MHCに提示される抗原ペプチドの生成に重要な働きをおこなっていると考えられている。しかし、我々はGILTがウイルス・エンベロープ蛋白質のS-S結合を切断することにより感染を抑制することを報告した。哺乳類GILTの酵素活性中心配列はCXXCとなっている。しかし、節足動物GILTの酵素活性中心はCXXSである。我々は、節足動物GILTが抗ウイルス活性を保持しているが、S-S結合切断活性を保持していないことを報告した。この結果は、GILTの本来の働きが、MHCに提示される抗原ペプチドの生成ではなく、抗ウイルス活性であることを支持する。 また哺乳類においてGILT発現はインターフェロンγによって誘導されるが、節足動物にインターフェロンγは存在しない。そこでヒト細胞におけるインターフェロンγによるGILT発現誘導の分子メカニズムを解析した。ほとんどのインターフェロン誘導性遺伝子は、転写活性化により誘導される。しかし、興味あることにGILT mRNAレベルがインターフェロン未処理細胞においても非常に高く、インターフェロン処理でも変化しなかった。この結果は、GILTが転写後の調節メカニズムにより誘導されることを示している。GILT蛋白質の安定性はインターフェロンの有無で影響を受けなかった。インターフェロンγ非存在下において、GILT mRNAの非翻訳領域は翻訳を抑制した。インターフェロンγによるGILT蛋白質の誘導はmTOR阻害剤ラパマイシンによって抑制された。インターフェロンγがmTORを活性化し、活性化されたmTORがGILTの翻訳を引き起こすことを突き止めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の目標は、海産下等動物からヒトウイルス感染を抑制する遺伝子を同定することである。本研究の結果、GILTとlegmainを同定し、節足動物GILTはウイルス・エンベロープ蛋白質とS-S結合を介して複合体を形成することにより感染を抑制すること、プロテアーゼであるlegmainは、ウイルス蛋白質を分解することにより感染を抑制することを突き止めた。よって、当初の目標は達成された。それらの計画から更に、GILTの進化、GILTの発現調節機構を解明することができ、計画していたことに加えて、追加的な研究成果を得ることができた。また、ここに詳細は記載しなかったが、GILTが細菌病原性や内在性レトロウイルスによる胎盤形成に関わっていることを示唆する研究結果も得た。
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今後の研究の推進方策 |
本研究により、GILTが様々なウイルスに加え、細菌病原性や妊娠にも関与する多機能な宿主因子であることを突き止めた。私が、抗ウイルス因子としてGILTを発見した後、世界中の科学者が、その結果を確認し、更にはウイルスだけでなく寄生虫、細菌にも関わっていることを報告した。更に、GILTは、哺乳類だけでなく、爬虫類、両生類、節足動物、植物、カビに至る様々な生物に存在し、病原体と宿主の進化的相互作用に大きく関わっていることが示唆され、自然免疫における中心的な働きをおこなっていることが分かった。今後、病原体と宿主の相互作用、特に進化的な観点において、GILTの役割を詳細に解明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
最終年度に、得られた成果を国際学会で発表する予定であったが、新型コロナウイルス流行の影響で、参加する予定の学会が開催されなかった。2023年12月にイタリアで開催される予定なので、その学会に参加・発表する予定である。
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