最終年度においては、インターフェロン誘導性ウイルス抑制因子 RyDEN(C19orf66/SHFL)と相互作用する細胞性分子の細胞内局在の解析をおこなった。GFP タンパク質を融合した RyDEN を恒常的に発現する細胞を新たに樹立し、その細胞におけるデングウイルスやチクングニアウイルスの増殖阻害を確認したのち、共焦点レーザー顕微鏡にて GFP-RyDEN の細胞内局在を解析したところ、ER と考えられる領域に多く存在することが示された。また、細胞質内で特異的に局在するスポットも観察され、RyDEN は RNA 代謝に関わる P-body にも集積する可能性が考えられた。興味深いことに、分裂期前後の細胞では RyDEN は核内に集積する傾向が見られた。我々の先行研究の結果より、RyDEN は細胞質で複製する RNA ウイルスだけでなく、核内でゲノム複製・遺伝子発現をおこなう DNA ウイルスの増殖も抑制することが明らかになっていることから、本研究で得られた RyDEN の細胞内局在のダイナミックな変化が多様なウイルスに対する抑制機構の基盤となっていると推察された。一方、RyDEN の会合分子としてすでに同定した PABPC1 と LARP1 については、それぞれの特異的抗体を用いた免疫染色法によって細胞内の局在を解析し、PABPC1 と LARP1 は細胞質で共局在することが示された。また、PABPC1 は RyDEN との共局在も確認されたことから、少なくとも細胞質内においては RyDEN は PABPC1 や LARP1 と相互作用することで RNA ウイルスに対する阻害複合体を形成していると考えられた。
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