単純ヘルペスウイルス(HSV)母子感染は、出産時に母外陰部のウイルスから感染する垂直感染とそれ以外からの水平感染がある。出産時に外陰部にHSVが存在してもその5%しか感染しない。母の外陰部株と新生児株の2セットを得て、母株と児株ではUL13遺伝子の変異を確認し、Vero細胞と肝細胞癌由来HepG2細胞のトロピズムと温度感受性に差異が共通であることを見出した。そして、米国アラバマ大学保有する母子感染したHSV株でクローニングした株はDNAを濾紙に吸着し持ち帰った。その試料から、HSVDNAを抽出して、UL13については、新生児ヘルペス由来HSV-2株を合わせ、19株のうち、出産後8日以内の5株中4株ではUL13の変異を認め、それ以降の14株中12株や第3セメスターの性器ヘルペスではUL13の変異を認めなかった(P<0.01)。UL13の野生型と変異型UL13をHepG2細胞に組み込んで、両者で差異のある蛋白をプロテオーム解析により、elongation factor 1 delta (EEF1D)と数種の細胞性蛋白を同定し、それら複数の候補蛋白について、野生型と変異型UL13株の感染細胞で蛋白のリン酸化量をウエスタン法で比較し特異的に変化が認められた標的蛋白はEEF1Dのみであった。一方、出産直前の(第3セメスター)の妊婦の外陰部から分離した27株HSV-2中1株にのみ認め、新生児分離株で有意にUL13変異を認めた(P=0.0146)。そして、変異型UL13は、8日以内の分離株(4/5株)に有意に多く、それ以降は変異型UL13 (2/14株)が少なく、垂直感染は変異型UL13株で、水平感染は野生型UL13が統計学的に有意であった。垂直感染ではUL21遺伝子との対比から変異型UL13 HSV-2株による新生児ヘルペスが有意に多いことが明らかになった。
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