研究課題/領域番号 |
19K07598
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研究機関 | 公益財団法人微生物化学研究会 |
研究代表者 |
滝沢 直己 公益財団法人微生物化学研究会, 微生物化学研究所, 研究員 (50448502)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | インフルエンザウイルス / ゲノムRNA / RNA二次構造 / RNA高次構造 |
研究実績の概要 |
インフルエンザウイルスのゲノムRNAの網羅的二次構造解析を行った。インフルエンザウイルスゲノムRNAは粒子内および感染細胞内においてはウイルスタンパク質であるnucleporotein(NP)およびウイルスRNA依存性RNAポリメラーゼと結合してviral ribonucleoprotein(vRNP)の形をとっており、一部のRNA構造はほどかれた状態で存在する。このため、in silicoでの二次構造予測とは異なる構造を形成していると考えられるため、実験的に網羅的二次構造解析を行った。ウイルス粒子に対してDMSまたはNAI処理を行い、一本鎖RNA特異的修飾を行った。処理を行った粒子よりRNAを精製し、逆転写を行い大規模シークエンスライブラリー作成後、大規模シークエンスを行った。修飾を受けた塩基で逆転写反応が停止するので、末端の塩基を修飾塩基の指標として配列の解析を行った。解析の結果、インフルエンザウイルスゲノムRNA上にvRNPの状態でもpseudoknot構造が形成されることを明らかとした。このpseudoknot構造が解消される変異を導入した組換えウイルスにおいては野生型と比較してウイルス増殖は減少していた。この結果はpseudoknot構造がウイルス増殖において機能的であることを示唆している。また、組換えウイルスにおいてはある特定の分節の子孫ウイルス粒子中への取り込みが減少することも明らかとした。この結果は同定したpseudoknot構造がウイルスゲノムの子孫ウイルス粒子中への取り込みに関与することを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画よりも早くウイルスゲノムRNAの網羅的二次構造解析により、ウイルスゲノムRNA上で特徴的なRNA構造を見出すことが出来た。この結果は現在論文投稿中である。計画以上に進展した分については、予定よりも早くRNA二次構造に結合する化合物の探索を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に明らかとしたウイルスゲノムRNAの二次構造情報を基盤として、ウイルスゲノムRNAに結合する化合物の探索、機能解析を進めていく。ウイルスゲノム構造の網羅的解析結果から、小分子RNAは比較的どの領域もウイルスゲノムRNAに結合することが予想されるため、特異的RNA構造に結合する化合物の探索に重点をおいて研究を行う。また、本年度に同定したウイルスゲノム上に形成されるpseudoknot構造についてウイルス増殖における役割について詳細を明らかとする予定である。
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