|
インフルエンザウイルスはRNAウイルスであり、ゲノムは8本に分節化している。ウイルス粒子中や感染細胞内でウイルスゲノムRNAはウイルスタンパク質と複合体（vRNP）を形成している。本研究はvRNP上に形成されるRNA二次構造を網羅的に同定し、同定したRNA構造の機能について明らかとすることを目的とする。昨年度まで、SHAPE-seqおよびDMS-seqを行い、vRNP上に形成されるRNA二次構造を１か所同定し、機能解析を行った。
本年度は昨年度まで得られたSHAPE-seq、DMS-seqのデータを精査することで、vRNP上に形成されるRNA二次構造についてさらなる同定を試みた。今年度の解析では一本鎖RNAに特異的に反応する化合物の反応性に加えて、複数のRNA構造を取る可能性をシャノンエントロピーで評価を行い、二次構造を形成する領域の同定を行った。この結果、新たに6ヶ所のRNA二次構造領域を同定した。この6ヶ所のRNA二次構造に対して、二次構造形成を阻害する変異を導入した組換えウイルスを作成し、これら組換えウイルス増殖について評価をした結果、一つの組換えウイルスで有意なウイルス増殖の低下が見られた。また、この組換えウイルス感染細胞内においてはRNA二次構造に変異を導入した分節特異的にウイルスゲノム複製が低下し、分節特異的なウイルスゲノム複製低下にともなって子孫ウイルス粒子中に取り込まれる分節比も変化していた。これらの結果はRNA二次構造がウイルスゲノム複製に関与することを示している。昨年度までで同定していたvRNP上に形成されるRNA二次構造に変異を持つ組換えウイルスはウイルスゲノム合成全体が低下しており、本年度の結果と合わせてRNA二次構造がウイルスゲノム合成に多様な作用を及ぼすことが明らかとなった。
|
