研究課題/領域番号 |
19K07601
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研究機関 | 公益財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
小林 郷介 公益財団法人東京都医学総合研究所, ゲノム医科学研究分野, 主席研究員 (80644989)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | エンテロウイルス71 / 受容体 / 組織特異性 / 宿主因子 |
研究実績の概要 |
Enterovirus 71 (EV71)は手足口病の病原体であるが、諸外国において中枢神経合併症が公衆衛生上の大きな問題となっている。この際、糞口感染によって口から感染した病原体が扁桃やパイエル板などの上皮系のリンパ組織や腸管上皮から体内に感染し、局所のリンパ組織で増殖した後、中枢神経に到達しその感染によって麻痺等の中枢神経症状を呈する。このようなEV71の組織指向性が、組織特異的に発現している宿主因子とEV71との相互作用に起因するという仮説に基づいて、EV71の標的組織における増殖性をモデル細胞株を用いて評価し、ゲノムワイドノックアウトライブラリースクリーニングによってEV71の増殖に必要な宿主因子を同定し、その中から組織特異的な因子を発見することを最終目標としている。 今年度は、EV71の病原性と最も密接している神経細胞に焦点を絞って解析した。数種類の神経芽細胞腫由来の細胞株を入手し、それらの細胞でのEV71の増殖性を確認した。その結果SH-SY5Y細胞を選択した。その理由は、EV71強毒株が弱毒株よりも効率よく増殖できるからだ。さらに、より生体に近い細胞を得るために、レチノイン酸を用いてSH-SY5Y細胞を神経細胞様に分化させて感受性の変化を調べた。その結果、感受性が上昇することはなかった。したがって、今後はSH-SY5Y細胞を用いてスクリーニングを実施する予定である。 また、EV71の培養に用いられるRD細胞(横紋筋肉腫由来)を用いてゲノムワイドノックアウトライブラリースクリーニングを実施したところ、受容体SCARB2の他、硫酸基負荷酵素SLC35B2が同定された。これは、アタッチメント受容体のへパラン硫酸などに硫酸基を負荷する酵素であり、この系でアタッチメント受容体を同定できることを示していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
神経細胞をはじめ、腸管、皮膚、血球系の他の組織由来細胞に関しては、既に細胞バンクから購入済みである。この中で最も重要な神経細胞については細胞の選定を終えている。また、RD-A細胞を用いてゲノムワイドノックアウトライブラリースクリーニングを行った。これらは当該年度に実施予定の項目であり、それが行えたことから、概ね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
神経細胞株SH-SY5Yを用いてゲノムワイドノックアウトライブラリースクリーニングを実施する。続いて、皮膚や血球系など他の組織由来細胞株を選定してゲノムワイドノックアウトライブラリースクリーニングを実施する。その解析の結果から組織特異的な宿主因子を選び出して、機能解析を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費で購入予定だった次世代シーケンスの試薬は、他の経費により既に購入済みだったためその分の支出が減っている。旅費に関しては令和2年度に実施予定であった国際学会が中止になったため、支出が0になっている。 新型コロナウイルスの影響により、次年度も学会開催の見通しがたたないため、培養器具や試薬などの物品費として使用する予定である。
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