研究課題/領域番号 |
19K07603
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
竹内 新 東京医科大学, 医学部, 准教授 (00360579)
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研究分担者 |
片貝 智哉 新潟大学, 医歯学系, 教授 (00324682)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | リンパ節 / 免疫監視 / ストローマ細胞 |
研究実績の概要 |
経皮的に侵入した抗原が予想以上にアレルギーの発症と深く関わっていることが明らかとなってきているが、発症に至るメカニズムは依然として不明な点が多い。本研究では皮膚所属リンパ節の内部に注目し、流入する抗原がリンパ節内に取り込まれる場所やリンパ球の活性化が誘導される場所とアレルギー発症との関係を明らかにすることを目的としている。特に免疫原性の高い抗原はリンパ節の髄質域に蓄積し易く、その近傍にはB細胞の集積を認める固有の微小環境(深皮質辺縁部:DCP)が形成されていることに注目している。この領域独自の免疫監視システムとアレルギー発症との関わりを解明しようと試みている。 本年度は、初年度に解析を行ったリンパ節内でのB細胞の循環経路と、昨年度確認にしたリンパ節内への抗原の取り込みの結果を元に、DCP領域で実際にB細胞による抗原の認識が行われているのかを確認した。一連の実験において抗原として使用しているオボアルブミン-卵白リゾチーム複合体は、卵白リゾチーム特異的B細胞受容体を持つトランスジェニックマウス(MD4)由来のB細胞によって認識することができる。MD4由来のB細胞を移植後、オボアルブミン-卵白リゾチーム複合体を皮下に投与すると、所属リンパ節においてB細胞の活性化が認められた。この活性化がDCP領域で誘導されているのかを調べたところ、抗原特異的B細胞が抗原と接触する頻度は濾胞領域よりもDCP領域で優位に高いことが判った。これらの結果から、DCP領域はリンパ節に流れ着いて濃縮された抗原の一部を樹状細胞依存的にリンパ節内部に取り込む場所であると同時に、新たに血流から進入してきたB細胞を呼び寄せ、効率的に免疫監視を行う場所を提供している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度はこれまでに得られた結果を元に解析を進め、髄質近傍で樹状細胞がリンパ節内に抗原を取り込むことで、リンパ節の深部においてもB細胞の活性化が誘導されていることを確認することができた。しかしDCP領域でB細胞の活性化が誘導されていることを確実に示すためにはCXCL12の発現をリンパ節のストローマ細胞特異的に欠失させたコンディショナルノックアウトマウス(CXCL12-flox x CCL19-Cre)を用いて解析を行うなど、さらに検討が必要である。また抗原の性質の違いがアレルゲン性に及ぼす影響を調べるために様々な種類の同一抗原を投与して抗原特異的IgE抗体の産生量を比較するまでには至っておらず、計画はやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
MD4トランンスジェニックマウス由来のB細胞やCXCL12-flox x CCL19-Creマウスなどを用いてDCP領域でB細胞が活性化する過程を詳しく解析し、髄質近傍にも免疫監視を行う領域が存在することを確認する。また、性質の異なる同一抗原を免疫し、抗原特異的IgGおよびIgE抗体の産生量測定することで抗原の性質がアレルゲン性に及ぼす影響を調べる。これらの結果をまとめ、学術誌に報告する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は研究代表者の異動が伴い、実験環境を新たに立ち上げるところから行う必要があったため、研究の遂行までに時間を要した。また、コロナ禍の影響で移動が制限され、個体の解析なども思う様に進めることができなかったことから、一部の研究を次年度に持ち越すことにした。当該助成金はこれらの費用に充てる予定である
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