経皮的に侵入した抗原が予想以上にアレルギーの発症と深く関わっていることが明らかとなってきているが、発症に至るメカニズムは依然として不明な点が多い。本研究では皮膚所属リンパ節の内部に注目し、流入する抗原がリンパ節内に取り込まれる場所やリンパ球の活性化が誘導される場所とアレルギー発症との関係を明らかにすることを目的としている。特に免疫原性の高い抗原はリンパ節の髄質域に蓄積し易く、その近傍にはB細胞の集積を認める固有の微小環境(深皮質辺縁部:DCP)が形成されていることに注目している。この領域独自の免疫監視システムとアレルギー発症との関わりを解明しようと試みている。 昨年度までに組織染色による解析から得られた結果を元に、本年度は抗原が実際にCD11c陽性の細胞上に存在するのか、抗原特異的B細胞はその抗原を直接認識して活性化するのかを確認した。オボアルブミン-卵白リゾチーム複合体を抗原として皮下に投与後、フローサイトメーターを用いて所属リンパ節内で細胞表面に抗原が存在する細胞を解析した。興味深いことに、リンパ節内で主に抗原を提示している細胞はCD11c陽性であるのと同時にマクロファージのマーカーであるF4/80にも陽性であった。このダブルポジティブ細胞は主にDCP領域で観察され、これまでに得られていた結果と一致する。さらに抗原投与後に所属リンパ節からCD11c陽性細胞を単離して抗原特異的B細胞との共培養を行ったところ、B細胞の活性化マーカーが顕著に上昇した。これらの結果より、DCP領域に存在するCD11c、F4/80ダブルポジティブ細胞はリンパ節に流入して辺縁洞と髄洞の境界に蓄積した抗原の一部をリンパ節内に取り込み、新たに血流から進入してきたB細胞に直接抗原を提示していることが示された。
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