研究課題
自然免疫を担当する免疫細胞には様々な種類(自然リンパ球、NK細胞、NKT細胞、γδT細胞など)があり、これらの自然免疫細胞は、感染免疫応答・抗腫瘍免疫・炎症性疾患などの病態において重要な役割を果たしている。しかしながら、種々の自然免疫細胞の分化・維持・応答を支える骨髄微小環境(ニッチ)に多様性があるかどうか明らかではない。本研究では、ニッチを構成する骨髄ストローマ細胞がその種類によって異なる自然免疫細胞を支持しており、骨髄微小環境が機能的・解剖学的に小分画に分かれるかどうかを検証する。また、各々のニッチ小区画(compartment)を構成する骨髄ストローマ細胞が、正常時および病態時に果たす機能(維持・リザーバー・感染による動員)を包括的に調べることを目的とする。本研究には、「骨髄微小環境の機能的小区画化」という新規の概念を提示し、病態との関係性を明らかにする点に学術的な意義がある。本年度に実施した研究の成果から、1型自然リンパ球前駆細胞(ILC1P)・NK前駆細胞(NKP)・γδT細胞について骨髄内の集積領域が異なることが明らかになり、骨髄微小環境が区画化される可能性が示唆された。また、これらの自然免疫細胞と近接し相互作用する骨髄ストローマ細胞の種類を特定する実験を行った。更に、自然免疫細胞の誘引・繋留に関与する分子を明らかにするため、ニッチ構成ストローマ細胞が発現する候補タンパク質(ケモカインや細胞接着分子など)を探索する実験を行った。
2: おおむね順調に進展している
当該年度に計画していた、自然リンパ球前駆細胞・NK前駆細胞・γδT細胞に関する骨髄内集積領域の解析は、ほぼ予定通りに実施することが出来た。また、自然免疫細胞の誘引・繋留に関与する分子の探索も予定通りに進んでおり、区画化された骨髄微小環境の性状が明らかになりつつある。
自然免疫細胞の誘引・繋留に関与する分子を特定し、骨髄ストローマ細胞特異的に遺伝子を欠損したマウスを解析する。また、中和抗体をマウスに投与したときの自然免疫細胞の挙動を調べる。
(理由)次年度の実験用にあらかじめ遺伝子改変マウスを繁殖させる予定であったが、これに必要な仔マウスが充分に生まれなかった。そのため、繁殖用の純系マウス、系統の解析に必要な抗体類などの購入を見合わせた。(使用計画)翌年度分として請求した助成金と合わせて、直接経費の殆どは消耗品購入に充てる。組織からのストローマ細胞回収に酵素、磁気ビーズ、MACSカラムを使用し、フローサイトメーターでの細胞集団解析や切片染色実験に多種類の抗体が必要となる。また、解析マウスを系統維持するための純系マウス購入費と、飼料準備のための経費が必要である。実験用器具として、チューブ、チップ、注射筒、組織切片用スライドガラスなどの消耗品を購入する予定である。その他は、学会発表に必要な旅費や研究成果投稿料として充てる予定である。
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https://www.infront.kyoto-u.ac.jp/
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