自然免疫を担当する免疫細胞には様々な種類(自然リンパ球、NK細胞、NKT細胞、γδT細胞など)があり、これらの自然免疫細胞は、感染免疫応答・抗腫瘍免疫・炎症性疾患などの病態において重要な役割を果たしている。しかしながら、種々の自然免疫細胞の分化・維持・応答を支える骨髄微小環境(ニッチ)に多様性があるかどうか明らかではない。 期間全体を通じて実施した研究から、複数の自然免疫細胞が、定常状態の骨髄内部で固有の存在領域を形成していることが明らかになった。また、それぞれの自然免疫細胞に近接する骨髄ストローマ細胞(ニッチ構成細胞)の種類を探索し、自然免疫細胞の誘引・繋留に関与する分子群(ケモカインや細胞接着分子など)を特定した。これらの結果から、骨髄には自然免疫細胞を支持する「機能的に区画化された微小環境」がある可能性が考えられた。そして、慢性炎症疾患などの病態モデルマウスを適用した実験では、誘引・繋留に関与する分子の機能が阻害され、自然免疫細胞の骨髄内での挙動や末梢への動員に変化が起こることが明らかになった。以上のことから、定常状態においては、骨髄ストローマ細胞がその種類によって異なる自然免疫細胞を支持しており、病態時においては骨髄ストローマ細胞の性質が変容することが考えられた。一方で、骨髄微小環境の多様性について研究を進めるなかで、性別による性質の差異や、加齢に伴う変容に関する知見も得られた。
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