申請者らは、これまで腸内細菌が産生するピルビン酸および乳酸が、小腸粘膜固有層に存在するCX3CR1+貪食細胞上のGタンパク質共役型受容体GPR31に結合することで、貪食細胞における樹状突起伸長を促進することを報告した。野生型マウスおよびGPR31欠損マウスの皮下に大腸癌細胞株を接種したところ、腫瘍形成に差が認められたことから、その原因として腸管における制御性T細胞誘導能の違いを検討した。その結果、小腸の制御性T細胞(Treg)総数に変化はなかったが、GPR31欠損マウスではRORgt+ Treg数が有意に減少していた。ナイーブT細胞を野生型マウスおよびGPR31欠損マウスに移入し、オボアルブミンをマウスに経口投与したところ、GPR31欠損マウスではオボアルブミン特異的なRORgt+ Treg数が減少したことから、GPR31シグナルは小腸における抗原特異的なRORgt+ Tregの誘導を促進すると考えられた。RORgt+ Tregは経口免疫寛容の誘導および大腸炎の抑制に寄与することが報告されるTreg集団である。そこで、野生型マウスにピルビン酸を経口投与したところ経口免疫寛容が増強したが、GPR31マウスではピルビン酸投与の有無にかかわらず経口免疫寛容が成立しなかった。すなわち、ピルビン酸-GPR31によるRORgt+ Treg誘導は、腸管の恒常性維持に重要であると考えられた。今後、GPR31シグナル依存的に誘導されるTregが抗腫瘍免疫にどのような役割を果たすか検討する必要がある。
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