• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2020 年度 実施状況報告書

脂質代謝によるマクロファージ分化と肥満の制御メカニズムの解明

研究課題

研究課題/領域番号 19K07608
研究機関奈良先端科学技術大学院大学

研究代表者

川崎 拓実  奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 助教 (60584414)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワード自然免疫 / マクロファージ / 慢性炎症 / 肥満
研究実績の概要

健康な通常状態の脂肪組織内には、炎症抑制性マクロファージ(M2マクロファージ)が常在し、脂肪組織の恒常性維持に寄与している一方で、肥満状態になると脂肪組織は肥大化し、肥満状態では脂肪組織内に集積したTh1 細胞が分泌したⅡ型のインターフェロン(IFN-γ) によって活性化された炎症性マクロファージ(M1マクロファージ)が集積している。高脂肪摂取や、過食による肥満では、脂肪組織が肥大化し、体重の増大とともに肥満にともなう糖尿病や高血圧などの病態を引き起こすが、この肥満の増悪化にM1マクロファージが寄与していることが報告されている。M1マクロファージは、TNFαやIL-6などの炎症性サイトカインを分泌し、インスリンシグナルに影響を与え、インスリン抵抗性を亢進する。好中球に続いて単球も誘引され、脂肪組織内に流入し、炎症性サイトカインをさらに産生することで、脂肪組織内を慢性的な炎症状態にすることが知られている。これまで、野生型及びPIKfyve欠損マウスに高脂肪食(High Fat Diet (HFD))を付加することにより肥満を誘導したところ、通常食(Normal Diet (ND) )では変化がなかった。一方、野生型マウスでは肥満を誘導できたものの、マクロファージ特異的PIKfyve欠損マウスでは肥満状態が抑制されていることが明らかとなった。本年度は特にPIKfyv欠損マウスにおける肥満抵抗性のメカニズムを明らかにするため、肥満組織における免疫細胞の浸潤と脂肪組織マクロファージの遺伝子発現について検討した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

前年度までの成果により、マクロファージ特異的PIKfyve欠損マウスは高脂肪食(High Fat Diet (HFD))を付加することにより肥満誘導に対して抵抗性をもっていることが明らかになったことから、脂肪組織マクロファージの細胞表面マーカーの解析により、M1/Mマクロファージの分化、発現遺伝子の網羅的な解析を行った。脂肪組織内マクロファージをCD45+CD11b+F4/80+でゲートした後、さらにCD11cとCD206を用いてM1(CD45+CD11b+F4/80+CD11c-CD206+)およびM2(CD45+CD11b+F4/80+CD11c+CD206-)マクロファージとして分離し、その割合を解析した。その結果、HFD食付加により、脂肪組織内のM1マクロファージの割合が増加したが、PIKfyve欠損マウスではM1マクロファージの増加は見られなかった。次に脂肪組織マクロファージをCD45+CD11b+F4/80+の細胞表面マーカーを用いて分離し、網羅的な遺伝子発現の解析を行うことで、マクロファージによる慢性炎症について検証した。その結果、野生型マウスではHFDの投与によりマクロファージの遺伝子発現がNCDに比べ顕著に増減する遺伝子が100程度あるが、それら遺伝子の発現の増減はPIKfyve欠損マウス由来マクロファージでは見られなかった。また、炎症性マーカーやマクロファージの分化マーカーの詳細な解析により、PIKfyve欠損マウス由来マクロファージはM1マクロファージへの分化が抑制されていることが示唆された。

今後の研究の推進方策

PIKfyveは脂肪組織内におけるマクロファージの制御因子、特にM1/M2マクロファージの分化過程への関与が示唆された。脂質代謝酵素であるPIKfyveは産生脂質であるホスファチジルイノシトール5リン酸もしくはホスファチジルイノシトール3、5リン酸の産生制御を通じて、慢性炎症の際のマクロファージの分化を制御していることが示唆された。しかし、マクロファージに特異的なPIKfyveの欠損がどのようにマクロファージの分化に影響を与えているのか、その分子機構は不明である。これまでの先行研究で、PIKfyveはウイルス感染時においてイノシトールリン脂質のリン酸化を介して、IRFファミリー転写因子の一つであるIRF3を活性化することが報告していることから、PIKfyveは転写因子の機能を直接的もしくは間接的に制御することで、マクロファージの分化制御を行っていると考えられる。転写因子IRF3の同じファミリーに属するIRF5は、M1マクロファージへの分化誘導に重要であることが報告されていることから、今後、IRF5がどのようにPIKfyveにより制御を受けるのかに着目し研究を行う。また、慢性炎症制御にPIKfvyeが関与することが示されたことから、肥満をはじめとする慢性炎症の関わる疾患においてPIKfvyeの阻害剤が治療効果を示すのか検証を行う。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2020

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)

  • [雑誌論文] The Ca2+-dependent pathway contributes to changes in the subcellular localization and extracellular release of interleukin-332020

    • 著者名/発表者名
      Momota Masatoshi、Nagayama Mizuka、Okude Haruna、Ishii Ken J.、Ori Daisuke、Kawasaki Takumi、Kawai Taro
    • 雑誌名

      Biochemical and Biophysical Research Communications

      巻: 530 ページ: 699~705

    • DOI

      10.1016/j.bbrc.2020.07.127

    • 査読あり

URL: 

公開日: 2021-12-27  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi