一般的に、食べた物に対しては、経口免疫寛容と呼ばれる免疫制御システムが働き、アレルギーは生じない。しかしながら、食物アレルギーの罹患者は、食べた物に対してアレルギーが生じてしまう。近年、食べた物に対して、免疫寛容とアレルギーのどちらが誘導されるかについて、食物抗原の生体への暴露ルートに依存していることが仮説として提唱されている。すなわち、経口的な消化管を介した食物抗原の暴露は免疫寛容を誘導し、一方で、食物抗原の皮膚を介した暴露はアレルギーを誘導しやすい免疫環境をつくると考えられるようになった。 これまでに私たちは、マウス食物アレルギーモデルにおいて、予め食物抗原を経口投与し実験的な経口免疫寛容を誘導すると、食品抗原に対して強固な免疫抑制システムが構築されることを確認している(すなわち、食物抗原に対するIgE産生が抑制され、食物アレルギーは誘導されない)。そこで2021年度は、食物アレルギーの発症における経口免疫寛容と経皮感作の関係性を解明するため、まず経皮的な食物抗原の負荷による食物アレルギーモデルを既存の報告に倣って作製した。そして、経皮的な抗原負荷モデルにおいて経口免疫寛容を誘導することで、経皮的な抗原暴露が、経口免疫寛容を破たんさせることができるかについて検討した。しかしながら、作製したモデルでは、経皮的な抗原の負荷によって免疫寛容を部分的に破たんさせたが、個体差が大きく不安定な結果しか得られなかった。そこで、安定的な結果が得られるようにモデルを改良した。その結果、改良した経皮的な抗原暴露モデルでは、比較して安定して経口免疫寛容を破たんさせ、食物抗原に対するIgE産生を促し、重篤な食物アレルギー症状を誘導できることが明らかとなった。
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