研究課題/領域番号 |
19K07614
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研究機関 | 藤田医科大学 |
研究代表者 |
手塚 裕之 藤田医科大学, 共同利用研究設備サポートセンター, 講師 (30375258)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 樹状細胞 / TGF-β / クラススイッチ / 腸管関連リンパ組織 / 腸内細菌 |
研究実績の概要 |
抗体生産において、トランスフォーミング増殖因子(TGF)-βはIgAおよびIgG2bクラススイッチに不可欠なサイトカインである。腸管では、TGF-βが豊富に存在することが知られている。しかしながら、腸管関連リンパ組織(GALT)では、IgAに偏向したクラススイッチが誘導される。本研究では、GALTにおけるTGF-β依存性クラススイッチの分子基盤を明らかにすることを目的とする。この解明に向け、申請者はGALTに固有の樹状細胞サブセットと、それらを取り巻く微小環境の特殊性に着目した。 本年度は、GALT(パイエル板、およびその対照としてパイエル板と同等の構造をもつ盲腸リンパ節)におけるTGF-β依存性クラススイッチの誘導効率と樹状細胞との関連性について検討を試みた。その結果、パイエル板では、IgA+B細胞の頻度が高いのに対して、IgG2b+B細胞の頻度は低いことを確認した。またこれらの結果は、IgAクラススイッチを促す樹状細胞サブセットの頻度と相関していた。近年、パイエル板において、樹状細胞が局在する上皮下ドーム領域(SED)が、新たなIgAクラススイッチの場として注目されている。実際、パイエル板のSEDではIgA+B細胞に加え、IgA+形質芽細胞も多数存在することを見出しており、同所ではB細胞の分化を促す環境が構築されていることが示唆された。また、SEDは腸内細菌の主な侵入部位であることから、同所がGALTに固有の機能を樹状細胞に付与する場となる可能性が推測された。今後は、この点について検討を試みる予定である。 これらの結果は、パイエル板では、IgAクラススイッチを効率的に誘導する樹状細胞サブセットがSEDにも存在すること、また同細胞に固有の機能を付与する微小環境が構築・維持されていることを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は当初の研究計画に従い、GALT間ではTGF-β依存性クラススイッチの偏りや誘導効率が異なること、そしてこれらのクラススイッチの偏りは樹状細胞の質的な違いに依存することを見出した。また、GALTにおけるIgAクラススイッチの一部は、SEDの樹状細胞により制御されていることを示唆する結果も得られた。以上より、現在までの進捗状況は「おおむね順調に進展している」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、GALTの樹状細胞に固有の機能を付与する因子の同定を試みる。この目的のため、GALTの微小環境、特にサイトカイン環境およびその環境の構築や維持に重要であると考えられる腸内細菌に着目する。前者については、樹状細胞を誘導する上で重要なサイトカインを標的とし、GALTで選択的、かつ発現レベルの高いサイトカインを同定する。この結果に基づき、候補サイトカインあるいはその受容体に対する中和抗体を野生型マウスに投与し、GALTにおける樹状細胞の頻度およびTGF-β依存性クラススイッチの誘導を検討する。後者に関しては、GALT内部に存在する共生細菌Alcaligenesに着目する。また、無菌マウスあるいは抗生物質を継続的に飲水投与した野生型マウスを用いて、GALTに固有のサイトカイン環境の構築やそれに伴う樹状細胞の誘導が共生細菌の存在に依存する可能性についても検討をおこなう。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和元年度に交付された額は年度内にすべて使用する予定であったが、一部の物品の納品が年度内に間に合わなかったため。次年度使用額は極少額であるが、次年度交付額と合わせて計画通りに使用する予定である。
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