研究課題
本年度は3件の原著論文発表、7件の学会発表(招待講演2件を含む)、5件の邦文総説の執筆(図書2件を含む)を行なった。本年度の主な研究成果としては、食事により摂取したオメガ3脂肪酸が腸内細菌によって代謝されることで高機能性脂質代謝物に変換され、糖尿病を改善する働きがあることを高脂肪負荷マウスモデルを用いて明らかにした。亜麻仁油に豊富に含まれるオメガ3脂肪酸のαリノレン酸は、哺乳類にはない腸内細菌のユニークな飽和化代謝を経てαKetoAへと変換され、体内に吸収されて、マクロファージの核内受容体PPARγに作用することで抗炎症作用を発揮することが分かった。糖尿病の病態形成においては、αKetoAを経口摂取することで脂肪組織へのマクロファージの集積が抑制され、耐糖能やインスリン抵抗性が改善することが示された。αKetoAはヒト糞便中にも検出され、αリノレン酸の量と正の相関を示したことから、ヒトにおいてもαリノレン酸を摂取することでαKetoAの産生量を増加できることが示唆された。一方、個々のデータを詳細に解析すると、αリノレン酸の量は同じでもαKetoAの産生量にバラツキが認められることも分かり、腸内細菌叢の違いによりαKetoAの産生量に違いが出る可能性が示唆された。本研究成果はMucosal Immunology誌にて発表されるとともに、プレスリリースを活用し一般にも広く情報発信を行なった。この他、哺乳類酵素により産生されるオメガ3脂肪酸代謝物12-ヒドロキシエイコサペンタエン酸の抗炎症作用を見出し、アレルギー性接触皮膚炎や動脈硬化など複数の炎症性疾患に対し有効性を示すことを明らかにした。糖尿病の病態形成の背景に慢性的な炎症反応があることを考えると、亜麻仁油を摂取した際の糖尿病改善効果に、複数の高機能性脂肪酸代謝物が関与している可能性が高い。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (7件) (うち招待講演 3件) 図書 (5件)
Mucosal Immunology
巻: 15 ページ: 289-300
10.1038/s41385-021-00477-5
Scientific Reports
巻: 11 ページ: 10426
10.1038/s41598-021-89707-1
FASEB Journal
巻: 35 ページ: e21345
10.1096/fj.202001687R