研究課題/領域番号 |
19K07627
|
研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
吉田 裕樹 佐賀大学, 医学部, 教授 (40260715)
|
研究分担者 |
三宅 靖延 佐賀大学, 医学部, 准教授 (10392143)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | IL-27 / 樹状細胞 / 免疫抑制 |
研究実績の概要 |
IL-27は免疫抑制作用を持つサイトカインで、感染や自己免疫病態、あるいは自然炎症などを抑制し、さまざまな生体反応を制御している。IL-27は主として活性化したマクロファージや樹状細胞から産生されるとされている。これらを踏まえ、本研究では、以下の項目に関して、IL-27による免疫・炎症抑制機能を包括的に解明することを目的とした。1)レポーターマウスを用いてIL-27が産生される生理的・病理的環境を明らかにする。2)マクロファージの活性化やIL-27産生T細胞のクローン増殖、遊走などに注目し、また誘導性/恒常的IL-27産生条件を解析する。3)IL-27産生細胞の移入実験を行う これまでの研究では、試験管内での実験では主に骨髄細胞から分化させたマクロファージや樹状細胞(BMDM、BMDC)が用いられてきた。IL-27の個体内での産生細胞を解析する目的で、LPSをレポーターマウスに投与したところ、脾臓で樹状細胞のマーカーを持つ細胞がIL-27 p28を早期に産生することが判った。その他、肺などにおいても産生細胞が少数検出された。ところが、個体から単離した脾臓由来の樹状細胞を試験管内でLPSで刺激したところ、IL-27産生は全く認められなかった。このことは、これまでのBMDM、BMDCを用いた結果とは全く異なるものであり、個体内で樹状細胞がIL-27を産生するには、LPS刺激に加え、なんらかの追加刺激、あるいは細胞間相互作用やサイトカイン刺激など、産生条件・環境が必要であることを示唆している。現在、さまざまな条件下で樹状細胞を試験管内刺激を行い、IL-27が産生される条件を探索している。また、脾臓以外、例えば肺内などで見られるIL-27産生細胞に関しては、その細胞系譜や出現のタイミング、活性化・遊走状態などを解析している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
生体内でのIL-27産生が試験管内の刺激実験と異なることは、驚きでもあるが、その条件の探索が本研究の目的であり、その探索を行っている。条件の解明には至っていないが、現在さまざまな条件の検討を行っている。また、脾臓以外の臓器におけるIL-27産生細胞は少数であり、その解析が難しいが現在その詳細を解析している。
|
今後の研究の推進方策 |
IL-27の生体内における産生条件を、試験管内の実験で探索する。ただし、これは、必要条件が明らかにならない場合も想定できるため、その違いがあることを明らかにすることも目的の一つと考え、研究を進める。 現在、最も早期にIL-27を産生する樹状細胞について探索を行っているが、マクロファージなど他の細胞系譜に関しても検討を行う。また、細胞系譜特異的IL-27欠損マウス(導入済み)を用いて、各細胞由来のIL-27の役割の検討を行う予定である。現在までLPS投与実験を行ってきたが、これらのIL-27欠損マウスを用いて、感染実験を行うなどして、IL-27の生理的・病理的役割とその産生細胞を、より明らかにしていく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当該年度は、主として物品費と国内外の旅費(研究打ち合わせ、学会での成果発表)に支出を予定していたが、新型コロナウイルスパンデミックの影響で、国内外の出張がすべてキャンセルとなり。この支出がなくなった。また、これに伴い他施設と共同で行う(依頼する)予定だった実験の一部も実施できず、物品費の支出も予定より減少した。一方、研究成果の一部を論文発表したため、論文掲載料などをその他の項目で支出した。
|