幹細胞特異的に発現するring finger protein 43 (RNF43)は、Wnt受容体のFrizzled (Fzd)を分解するユビキチンリガーゼであることが、報告者を含む複数の グループから報告された。これまでの研究において我々は、RNF43がp53経路を抑制すること、Fzdを網羅的に分解することでcanonical Wnt/beta-cateninシグナルとnoncanonical Wntシグナルの両方を抑制し、がん抑制遺伝子として機能することすることを明らかにしてきた。また、RNF43の遺伝子変異によってWntシグナルの暴走に起因する発がんが引き起こされることを報告してきた。 本研究では世界に先駆け、高度に保存されているRNF43の4つ のセリン残基がリン酸化を受けることによりそのユビキチン化活性が調節されていることを、様多種多様な動物 モデルを用いて証明した。 発がん型変異RNF43はWntシグナルを異常活性化するにもかかわらず、p53を抑制する機能は維持していた。この結果 は、以前の報告で膵臓がんにおいてRNF43と活性型Ras変異が高頻度にリンクしている理由を明確に説明した。1. Wnt活性化>2. Ras活性化>3. p53不活性化と進行し ていく多段階発がんモデルにおいて、RNF43の変異が1段階目と3段階目の両方に関与することで、RasとRNF43の2つの遺伝子変異だけで発がんを達成することを実験的にも証明した。また発がん変異体ではリン酸化が消失しており、強制的にリン酸化状態にするとがん遺伝子機能回復することも示した。そこで今年度は発がん型の変異RNF43を細胞内でリン酸化する手法の解明を目指して条件検討を行った。その結果、RNF43のp53抑制機能ががん抑制に不利に働くことを見出した。
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