研究課題
本研究では、変異p53のもたらす"gain of function"がcancer initiatingやメバロン酸合成経路を介し、どの様にがんの増悪に関与しているのか、その作用機序を通して乳がんにおける悪性化分子機構と休眠スイッチ機構の解明を目的としている。これまでの研究において、CRISPR/Cas9により作成したMDA-MB-231 p53KO細胞株にp53WTと元々の形質である変異p53(R280K)をDoxycycline依存的に発現する細胞株をTet-On Systemを用い作成している。それらを用いp53を発現させ3次元培養を行い、同じ細胞種でのp53の違いによるがん悪性化形態の差を確認し、p53(R280K)のgain of functionががんの悪性化に重要であることを確認していた。今年度はそれらの細胞株を用い、培養条件の違いでの悪性形質の変化をまず確認したところ、コレステロール量の違いにより悪性形質が変化することを見出した。その一方で、変異p53の悪性化に関しても、変異p53による悪性化に関与する可能性のある因子を同定し、現在解析を進めている。また、2次元培養・3次元培養でのSingle cell RNA-seqを行い、培養条件や細胞株ごとの遺伝子発現の違いを確認した。その結果、単一の細胞株であるはずのMCF7やMDA-MB-231でもヘテロジェナイティがあることが明らかとなり、現在それぞれの条件を比較して解析を行っている。今後は、p53の違いだけでなく、悪性形質が現れるコレステロール条件下でRNA-seqやノンターゲットプロテオミクスを行い、悪性形質をもたらす遺伝子候補群を同定する予定である。そこで見出された候補遺伝子群が悪性形質や休眠に関与しているか検討し、悪性化と休眠スイッチ機構の解明につなげる予定である。
2: おおむね順調に進展している
主にMDA-MB-231を用いた解析を重点的に進め、変異p53による悪性化に関与する遺伝子候補を見出した。また、コレステロール状態の違いで悪性形質が変化することを見出し、そこからメバロン酸合成経路の中でも特にGGPP経路が悪性形質に関与していることを確認した。また、Single Cell RNA-seqを行い単一細胞レベルでの解析を進めている。
今後は、Single Cell RNA-seqの解析を進めると共に、p53ステータスの違いだけでなくコレステロール状態の違いによるRNA-seq及びノンターゲットプロテオミクス解析を行う。また、ChIP-seqも行い、それらから悪性形質をもたらす遺伝子候補群を同定する。更に、その見出された候補遺伝子、並びに今回同定した変異p53による悪性化に関与する遺伝子に関して、ノックダウンやノックアウトを行い、実際に悪性形質や休眠に関与しているのか検討する。また同時に、in vivo、臨床検体での検討を進める予定である。
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