研究課題/領域番号 |
19K07641
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
孫 継英 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 准教授 (80397926)
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研究分担者 |
田代 聡 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 教授 (20243610)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ARP8 / ATR |
研究実績の概要 |
放射線や抗がん剤で誘導されたDNAの損傷は、その修復エラーによって突然変異や染色体構造異常などを誘導する。それによる遺伝情報の改変は、がんや白血病など悪性腫瘍の発症に繋がることが知られている。転写、複製、修復などのDNA代謝を制御するINO80クロマチンリモデリング複合体が関与する発がんの分子機構を解明するために、DNA複製フォーク障害の修復制御と染色体構造異常の形成抑制におけるATRによるINO80複合体構成因子ARP8リン酸化の役割を検討する。 我々は、ATMがINO80複合体構成因子ARP8をリン酸化することで、抗がん剤エトポシドによる二次性白血病の疾患特異的染色体転座を抑制することを報告している。エトポシド処理によるARP8のリン酸化には、ATMだけでなくDNA 複製フォーク障害の修復に関与するリン酸化酵素ATRも関わっていることも明らかにした。令和元年度は、主に複製フォーク障害を誘導する薬剤を使ってARP8のリン酸化状況を検討した。その結果、ARP8は複製フォーク障害の誘導によりリン酸化されることがわかった。また、複製フォーク障害に関わるリン酸化酵素ATRとARP8のリン酸化の関連について、ATRのリン酸化機能を抑制する阻害剤を用いるとARP8のリン酸化が顕著に抑制されることを確認した。さらに、ARP8の野生型とリン酸化変異体の誘導型安定性発現細胞を用いて比較検討した結果、複製フォーク障害を誘導するヒドロキシウレア(HU)の処理に対する感受性が異なることが明らかになった。これらの結果からATRによるARP8のリン酸化は複製フォーク障害の修復に関与することが考えられ、今後さらに検討を進めていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和元年度は、ほぼ予定の通りに研究を進めた。ARP8は複製フォーク障害の誘導によりリン酸化されることがわかった。また、複製フォーク障害に関わるリン酸化酵素ATRとARP8のリン酸化の関連について、ATRの阻害剤を用いるとARP8のリン酸化が顕著に抑制されることを確認した。さらに、ARP8の野生型とリン酸化変異体の誘導型安定性発現細胞を用いて比較検討した結果、複製フォーク障害を誘導するHUの処理に対する感受性が異なることが明らかになった。
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今後の研究の推進方策 |
前年度の研究結果を踏まえ、ATR阻害剤処理細胞でHUによる複製フォーク障害誘導前後のDNA複製速度をCldU/IdU複製標識法を用いて定量的に解析することで、複製フォーク障害の修復におけるATR によるARP8のリン酸化の役割を検討する。また、リン酸化ARP8と複製フォーク障害部位の関連について、チミジンアナログの5- エチニル-2'-デオキシウリジン(EdU)などによる複製標識を行った細胞での免疫蛍光抗体法、Proximity Ligation Assay (PLA)法などを用いた局在関連の定量的解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入予定の試薬が年度末に納品完了できなかったため、次年度に繰り越し試薬を購入する。
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