研究課題/領域番号 |
19K07646
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
能正 勝彦 札幌医科大学, 医学部, 訪問研究員 (10597339)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 大腸癌 / Fusobacterium / microbiota / 免疫チェックポイント |
研究実績の概要 |
近年、大腸癌の発生・増大に腸内の常在微生物(microbiota)であるFusobacterium属の関与が注目されている。また抗PD-1抗体などの免疫チェックポイント阻害薬が出現し、癌の免疫治療が劇的に変化してきているが、腸内細菌叢がその薬剤の効果に影響を与えることも報告されており、消化器癌におけるmicrobiota研究は臨床において重要性を増している。本研究では申請者らが保有する約3000例を超える消化器癌やそれらの前癌病変の臨床検体を用いて、臓器別に癌の発生や発癌過程で重要な役割を果たすmicrobiotaを明らかにする。また同定されたmicrobiotaと癌のエピゲノム異常やmicroRNA発現等の消化器癌の様々な分子異常やT細胞による免疫応答の関連を解明。さらには生活様式等の環境因子や体質などを組み合わせた分子疫学的研究も行う。 上述のように多種、多症例の消化器癌を用いてそれぞれの癌種で特定される微生物種とその分子病理学的異常や腫瘍免疫応答、さらに環境因子との関連を検討することは、日本人の消化器癌に特有のmicrobiotaが同定されることや、これまでに発癌への関与が報告されていなかった癌で新たな微生物が発見される可能性がある。またmicrobiotaの役割を解明することができれば、その発現プロファイルに基づくサーベイランス、さらには免疫チェックポイント阻害薬のバイオマーカーとして癌免疫治療を劇的に変化させる可能性もあり、様々な分野において臨床応用が可能であると予想される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大腸発癌に関わるFusobacteriumの特定と癌の病理組織学的因子やゲノム異常、癌関連遺伝子メチル化、microRNA、等の分子異常との相関についての解析が順調に経過していること。 また大腸癌の臨床検体の解析結果を利用して日本人と米国白人の人種差での発現の違いについての検討も予定通り進んでいるため。
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今後の研究の推進方策 |
大腸腫瘍のESD検体によるFISH、digital PCR法によるF. nucleatumの分布と存在量の同定 のため臨床検体を用いて大腸前癌病変、早期大腸癌、正常粘膜におけるF. nucleatumの分布と存在量の同定し、F. nucleatumに関連性の高い発癌経路の特定を目指す。 また大腸前癌病変、早期大腸癌、正常粘膜におけるF. nucleatumの分布についてFISH法を用いて同定し、digital PCR法を用いて定量する方法を確立する。 遺伝子変異マウスなどを用いたF. nucleatumの増殖、発癌を抑制する食餌、Probioticsの探求のために動物実験として大腸腺腫発生遺伝子変異マウスなどを用いたF. nucleatumの増殖、発癌を抑制する食餌、Probioticsを探求し、その抑制機序の解明を目指す。 大腸発癌に関わる腸内細菌とPD-L1発現、免疫チェックポイント阻害薬との関連について検討を進める予定
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次年度使用額が生じた理由 |
理由:PCR関連試薬が安価で大量に購入することができたため。 使用計画:次年度に当初の予定よりも多くのPCR関連試薬やゲノム解析の試薬を購入する予定。
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