研究課題/領域番号 |
19K07647
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研究機関 | 東北医科薬科大学 |
研究代表者 |
吉村 明 東北医科薬科大学, 薬学部, 講師 (70302164)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | TLS / WRNIP1 / Polη / Polδ / PrimPol |
研究実績の概要 |
早老症Werner症候群の原因遺伝子産物WRNはゲノム安定性の維持に重要な役割を果たすと考えられている。WRNと相互作用する因子として見出したWRN helicase interacting protein1 (WRNIP1)は、AAA+ ATPaseファミリーに属するタンパク質で、N末端側にUbiquitin binding zinc-finger(UBZ)ドメイン、中央部にATPaseドメイン、C末端側にWRNIP1の多量体化に必要なロイシンジッパードメインが存在する。 現在までのデータより、損傷トレランス機構の一つである損傷乗り越え合成(translesion synthesis:TLS)でTLSポリメラーゼの制御にWRNIP1が関わると考え、研究を進めてきた。本年度は、WRNIP1の機能解析を目的とし、WRNIP1の各ドメインの役割について解析を行なった。TLSポリメラーゼの一つPolηとWRNIP1との関わりについてこれまで研究を展開しており、ニワトリDT40 Polη破壊細胞でWRNIP1を欠損させるとPolη破壊細胞のUV感受性を抑制する。このUV感受性にWRNIP1のロイシンジッパードメインが関与することを明らかにした。また、ロイシンジッパードメインがDNA損傷トレランス機構で働くRAD18やDNA polymerase δのサブユニットPOLD1との結合に必要であることを明らかにした。ATPaseドメインはPrimPolの安定性の制御に重要であること、Polη破壊細胞においてUBZドメインがUV誘発性のPCNAのモノユビキチン化に関与することを明らかにした。この研究成果は、Biological and Pharmaceutical Bulletinに投稿し、受理された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
TLSにおいては、損傷のある鋳型を複製できない複製ポリメラーゼからTLSポリメラーゼへの置き換わり、再び複製ポリメラーゼの置き換わるポリメラーゼスイッチが起こる。真核生物においてラギング鎖のDNA合成を担うPolδと、TLSポリメラーゼのPolηの両方とWRNIP1は相互作用するため、WRNIP1がポリメラーゼスイッチに関わる因子の一つではないかと考え、本研究を進めている。 PolηもWRNIP1も存在しない時には、error-free型のDNAポリメラーゼがUVによる損傷を処理していることが示唆されたため、新規のerror-free型のTLS経路が存在する可能性を考えた。この新規経路においてPolδが関わるという仮説をたて、WRNIP1とPolδの関わりについて明らかにすることを目指した。Polδは、p125、p66、p50、p12の4つのサブユニットから構成されている。ニワトリDT40細胞でPolδのサブユニットp66(Polδ3)の破壊細胞が作製されているので、WRNIP1/Polδ3の二重破壊細胞を作製し、遺伝学的解析を行なった。その結果、WRNIP1がTLSにおいてポリメラーゼスイッチに関与するという現在までの仮説を支持するデータが得られた。 また、他のPolδのサブユニットの破壊細胞やPolδの関連因子破壊細胞とWRNIP1との二重破壊細胞の作製に成功した。 以上より、研究が順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
WRNIP1とPolδ関連の二重破壊細胞の作製ができたので、遺伝学的解析をさらに推し進め、WRNIP1とDNAポリメラーゼ、TLSポリメラーゼの関係について明らかにし、WRNIP1がTLSにおいて果たす機能を解明する。 また、TLSにおいて機能する他の因子とWRNIP1との未だ作製できていない二重破壊細胞を作製し、網羅的な遺伝学的解析を進める。こうした因子の破壊細胞は増殖が悪いことが多く、二重破壊細胞の作製が困難であるため、条件付破壊細胞の作製を検討している。
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