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2019 年度 実施状況報告書

タンパク質恒常性の破綻による大腸がん増悪メカニズムの解明

研究課題

研究課題/領域番号 19K07650
研究機関同志社大学

研究代表者

和久 剛  同志社大学, 生命医科学部, 助教 (40613584)

研究分担者 小林 聡  同志社大学, 生命医科学部, 教授 (50292214)
研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワードNRF3 / NRF1 / CPEB3 / 翻訳 / プロテアソーム / がん増悪
研究実績の概要

本研究の目的は、タンパク質恒常性の破綻によるがん増悪メカニズムを解明することにある。がん細胞においては、プロテアソームによるプロテオスタシスが破綻していることが知られているが、その分子メカニズムは不明なままであった。申請者らはこれまで、転写因子NRF1(NFE2L1)が26Sプロテアソームを発現誘導し、ユビキチン依存的なタンパク質分解を維持することを報告していた。近年、NRF1関連因子であるNRF3(NFE2L3)が20Sプロテアソーム構築因子であるPOMPを転写することでユビキチン非依存的なタンパク質分解を活性化し、腫瘍増大に寄与することを発見した(NRF3-POMP-20S活性化経路)。さらに、NRF3はRNA結合因子CPEB3発現を介してNRF1翻訳を抑制することで、26Sプロテアソーム活性を低下させる可能性も見出した(NRF3-CPEB3-26S抑制経路)。これらの知見から、NRF3はユビキチン依存的および非依存的なタンパク質分解経路の両方を制御することでタンパク質恒常性を変化させ、がん増悪に寄与していると仮説を立てた。本年は、NRF3-CPEB3-26S抑制経路の分子生物学的な検証をおこなった。その結果、NRF1とNRF3のダブルノックダウンにより、プロテアソーム関連遺伝子の発現や活性、プロテアソーム阻害剤ボルテゾミブへの抵抗性が有意に低下した。さらに、CPEB3がNRF1-3'UTRに結合しNRF1 mRNA上のポリソーム形成を減少させることでNRF1の翻訳を抑制することも明らかにした。加えて臨床分析から、大腸癌患者の予後がCPEB3 / NRF3 mRNA高発群で低下することも見出した。これらの結果は、NRF3-CPEB3-NRF1翻訳抑制軸は、癌細胞の生存・増殖だけでなく、癌患者の予後にも関わる新たなプロテアソーム活性調節メカニズムであることを示している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

当初の予定よりも早く論文化まで進むことができ、4月17日現在でリビジョンの再投稿を完了しているため。

今後の研究の推進方策

今後は当初の予定を前倒しして、遺伝子改変マウスを用いた解析を進める。当初はNrf3ノックアウトマウスを使用する計画であったが、本年の知見から、Nrf1がNrf3ノックアウトを補完する可能性も考えられたため、Nrf3の全身性トランスジェニックマウスを用いて解析を進める。具体的には、腸管組織でのCPEB3やNrf1発現、プロテアソーム活性、および腫瘍形成を調べる。また新たな展開として、タンパク質分解経路や腸管がんのNrf3の標的の機能を探索する。現在すでに複数のNRF3標的経路やがん種を見出し解析を進めている。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2020 2019

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件)

  • [雑誌論文] New addiction to the NRF2-related factor NRF3 in cancer cells: Ubiquitin-independent proteolysis through the 20S proteasome.2020

    • 著者名/発表者名
      Kobayashi A, Waku T.
    • 雑誌名

      Cancer Sci.

      巻: 111 ページ: 6-14.

    • DOI

      10.1111/cas.14244.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] The inducible amphisome isolates viral hemagglutinin and defends against influenza A virus infection.2020

    • 著者名/発表者名
      Omi J, Watanabe-Takahashi M, Igai K, Shimizu E, Tseng CY, Miyasaka T, Waku T, Hama S, Nakanishi R, Goto Y, Nishino Y, Miyazawa A, Natori Y, Yamashita M, Nishikawa K.
    • 雑誌名

      Nat Commun.

      巻: 11 ページ: 162

    • DOI

      10.1038/s41467-019-13974-w.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] NRF3-POMP-20S proteasome assembly axis promotes cancer development via ubiquitin-independent proteolysis of p53 and Rb.2020

    • 著者名/発表者名
      Waku T, Nakamura N, Koji M, Watanabe H, Katoh H, Tatsumi C, Tamura N, Hatanaka A, Hirose S, Katayama H, Tani M, Kubo Y, Hamazaki J, Hamakubo T, Watanabe A, Murata S, Kobayashi A.
    • 雑誌名

      Mol Cell Biol.

      巻: - ページ: -

    • DOI

      10.1128/MCB.00597-19.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] β-Catenin/TCF4 Complex-Mediated Induction of the NRF3 (NFE2L3) Gene in Cancer Cells.2019

    • 著者名/発表者名
      Aono S, Hatanaka A, Hatanaka A, Gao Y, Hippo Y, Taketo MM, Waku T, Kobayashi A.
    • 雑誌名

      Int J Mol Sci.

      巻: 20 ページ: E3344

    • DOI

      10.3390/ijms20133344.

    • 査読あり
  • [学会発表] Colorectal cancer addicts ubiquitin-independent 20S proteasomes assembled by the NRF3-POMP axis2019

    • 著者名/発表者名
      Tsuyoshi Waku
    • 学会等名
      2019 Meeting on Ubiquitin, Autophagy & Disease (Cold Spring Harbor Laboratory Meeting)
    • 国際学会
  • [学会発表] 和久剛2019

    • 著者名/発表者名
      がん増悪性転写因子NRF3(NFE2L3)は mTORC1シグナルを活性化するアミノ酸センサーである
    • 学会等名
      第9回TOR研究会
  • [学会発表] NRF3-POMP経路を介したユビキチン非依存的なタンパク質分解の誘導による がん増悪メカニズム2019

    • 著者名/発表者名
      和久剛
    • 学会等名
      第7回がんと代謝研究会
  • [学会発表] NRF3 (NFE2L3) contributes to colorectal cancer development through 20S proteasome assembly and the ubiquitinindependent proteolysis2019

    • 著者名/発表者名
      Tsuyoshi Waku
    • 学会等名
      The Environmental Response V /17th JBS Biofrontier Symposium
    • 国際学会
  • [学会発表] NRF3 acts as a tumorigenic transcription factor for the assembly of a ubiquitin-independent 20S proteasome2019

    • 著者名/発表者名
      Tsuyoshi Waku
    • 学会等名
      第78回日本癌学会学術総会
  • [学会発表] NRF3-POMP経路を介したユビキチン非依存的なタンパク質分解の誘導によるがん増悪メカニズム2019

    • 著者名/発表者名
      和久剛
    • 学会等名
      第14回日本臨床ストレス応答学会大会

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公開日: 2021-01-27  

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