研究課題
本研究の目的は、網羅的体系的な解析によりERα変異体の未知の機能異常性を発見することである。昨年度までにスクリーニング系として、ERα陰性乳がん細胞株MB453において誘導的にERαを発現する細胞株(CS-ERα/MB453)を樹立、NGS未解析の変異体“X”をこの系に導入、ATAC-seq及びChIP-seqを実施したところ、変異体XはFoxA1結合ゲノム領域を活性化すことを発見した。本年度は詳細なNGSデータの解析と生化学的解析を行うことにより、変異体X・野生型に関わらずERaはともに間接的にDNA結合FoxA1へ会合する能力を有すること、一方変異体Xはクロマチンを開放型にして活性化するNcoA2のDNA/FoxA1複合体への結合を促進することを明らかにし、変異体Xによる乳がん悪性化の新規モデルを提唱した(現在論文投稿中)。一方、網羅的ルシフェラーゼアッセイにより機能異常性が示唆された高程度変異体ERa9種についてもCS-ERα/MB453解析系へ導入し、網羅的ATAC-seq及びChIP-seqを進めた。その結果、エストロゲン非依存的活性を示すC末端領域変異体(L538H/Y537S/D538G)以外でも、同様の異常性を示す変異体Y/Zが存在し、その変異部位はエストロゲン結合部位のC末端領域の外部に位置することや、変異体V/Wはエストロゲン非依存的活性とは異なる異常性(AP-1転写因子領域への結合亢進と活性化)を呈する事等を発見した。現在、生化学的固定DNA上相互作用解析法とLC-MS/MS法を用い、変異体Y特異的結合因子の同定及び異常化メカニズムの解析を進めている。以上により本研究の目的である「ERαの新規機能異常性の同定と病的意義の解明」と「ERα依存的な新規転写制御機構の発見」について、概ね順調に達成していると考えている。
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eLife
巻: 8 ページ: e67952
10.7554/eLife.67952
Proc Natl Acad Sci U S A
巻: 118 ページ: e2025647118
10.1073/pnas.2025647118