研究課題/領域番号 |
19K07654
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研究機関 | 千葉県がんセンター(研究所) |
研究代表者 |
竹永 啓三 千葉県がんセンター(研究所), がん遺伝創薬研究室, 特任研究員 (80260256)
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研究分担者 |
越川 信子 千葉県がんセンター(研究所), がん遺伝創薬研究室, 主任上席研究員 (90260249)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ミトコンドリアDNA / 細胞外小胞 / 細胞間移行 / ミトコンドリア / マイトファジー |
研究実績の概要 |
前年度に、マウス肺がん由来高転移性A11細胞が有する転移促進性G13997A変異ミトコンドリアDNA(mtDNA)が野生型mtDNAを有する低転移性がん細胞へ細胞外小胞(EV)を介して移行していることを明らかにした。また、これらのEVが癌関連線維芽細胞(CAF)や細胞障害性T細胞へも取り込まれることを示した。さらに、腫瘍内においてもA11細胞から放出されたEVがCAFへ移行している可能性を示した。本年度は、A11細胞のEVを超遠心法によりlarge EV (L-EV)とsmall EV (S-EV)に分画し性状を検討した。その結果、G13997A mtDNAはS-EVの方に多く含まれていることが判った。そこで、S-EV中にミトコンドリアタンパク質が存在するのか否かを調べたところ、内膜タンパク質であるCIII Core 1、外膜タンパク質であるPorin (1+2)や膜間腔タンパク質であるcytochrome cなどが検出された。さらにクライオ電子顕微鏡解析により、二重膜の小胞中にさらに二重膜を有する構造が観察された。この二重膜構造はミトコンドリア膜あるいは核膜由来と考えられたが、核膜タンパク質であるlamin A/Cが検出されないことからミトコンドリア膜であると推察された。しかし、ミトコンドリアの特徴であるクリステが認められず、変性した極小ミトコンドリアである可能性が示唆された。一方、S-EV画分にオートファジーのマーカーであるLC3が検出されることから、ミトコンドリア品質管理機構であるマイトファジーの過程で、リソソームと融合することなく、いわゆる“secretary autophagy”(LC3陽性の二重膜オートファゴソームがリソソームと融合されることなく細胞外へ出る現象)と同様な機構を介して放出された小胞がS-EV中に存在するのではないかと推察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究目的としてG13997A変異を導入した低転移性細胞の転移能の変化を検討することになっているが、野生型mtDNAを有する細胞へ移入した変異mtDNAの安定的な維持とコピー数の増加が達成できなかった。この原因として、野生型mtDNAを有する細胞ではミトコンドリア品質管理機構であるマイトファジーが作動するために、移入変異mtDNAが増幅されない可能性も考えられた。また、もう一つの研究目的として、G3394CあるいはC3497T SNPsががん細胞の転移能に及ぼす影響を検討することを当初の計画で上げていたが、これらのSNPsを有する細胞材料が発見できなかったため研究が遂行できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
移入変異mtDNAの安定的な維持とコピー数の増加を達成するため、低転移性がん細胞株でマイトファジーの低下が認められるものを見出し、その細胞にEVを介して変異mtDNAを導入する必要がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
投稿済み論文の査読による追加実験に対処するためと、投稿予定論文の英文校正料あるいは掲載料に充当するために当該助成金を次年度に繰り越した。
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