研究課題
本年度は、転移との関連が示唆されている変異mtDNAを有する種々のヒト由来がん細胞のmtDNAが肺癌A549細胞由来の ρ0A549neoR細胞(mtDNA欠失、G418耐性細胞)に細胞間移行し、核DNAは同一(A549細胞由来)であるがmtDNA変異が異なる細胞株が単離できるかどうかを検討した。また、浸潤・転移と関連する細胞遊走能がどう変化するかを調べた。肺癌細胞のA549細胞(ND2 T4587C変異)、RERF-Lc-Ad2細胞(ND4 G11453A変異)、H358細胞(ND1 T4216CおよびND5 G13708A変異)と対象としてmtDNAに病因性変異を有しない子宮頸癌由来HeLa細胞を用いた。同数のρ0A549neoR細胞と各々のがん細胞を3日間共培養した後、ピルビン酸・ウリジン不含、G418含有培地に撒き直し、10日間以上培養したところ、複数のコロニーが形成されることが判明した。ρ0A549neoR細胞はピルビン酸・ウリジン不含培地では増殖できず、がん細胞はG418で死滅することから、形成されたコロニーは各々のがん細胞のmtDNAがρ0A549neoR細胞に移行し当該培地中でも増殖できるようになった細胞から成ることが推察された。事実、コロニーから細胞株(A549mtA549co、A549mtRERFco、A549mtH358co、 A549mtHeLaco)を樹立し、mtDNA変異を確認したところ、各々のがん細胞由来のmtDNA変異のみを有することが判った。次に、それぞれの細胞株の細胞遊走能を調べたところ、A549mtHeLacoと比較して、A549mtA549co、A549mtRERFco、A549mtH358coの遊走能が高いことが判った。これらの結果から、mtDNAの細胞間移行によって受容がん細胞の浸潤・転移能が変化する可能性が示唆された。
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